医薬品小売業界が輝く中、事業存続型倒産が増加傾向に

事業存続型倒産の現状と影響

近年、事業存続型倒産が注目を集めています。2024年度において、負債が5億円以上の事業存続型倒産は161件に達し、これは3年連続の増加を示しています。これにより、経営が困難に直面している企業たちがどのように事業を維持するのか、その仕組みや背景について詳しく見ていきましょう。

事業存続型倒産とは

まず、「事業存続型倒産」という言葉について簡単に説明します。これは、企業が経営困難に陥っても何らかの方法でその事業自体が存続するケースを指します。具体的には、法的整理を行った後に事業譲渡や自主再建が成功した場合などです。したがって、事業の存続が確認できない場合や、清算を前提とする手続きが当てはまらない場合は、このカテゴリーには含まれません。

増加する件数とその影響

2024年度の事業存続型倒産の件数が161件で、前年より4件増加したことは一見驚くべき数字ですが、全体の倒産件数に占める割合（事業存続率）は32.9％にとどまります。これは、昨年度からわずか0.2ポイントの減少であり、依然として約3社に1社が事業を継続する状況にあると言えます。

業種別に見ると、最も多いのはサービス業で43件ですが、ここにも人手不足が影響を及ぼしていると考えられます。他方、特に注目すべきは「医薬品小売」業界で、なんと存続率は100％に達しました。これは、調剤薬局を中心に複数の企業グループが成功裏に事業譲渡を行った結果です。メディアでも話題に上っているM&Aが盛んな業界であり、存在感を増している背景が伺えます。

地域における動向

地域別に見ると、関東地方が最も多い71件の倒産を記録し、その後に続く九州や北海道でも顕著な増加が見られました。これにより、地方においても事業存続の動きが高まっております。特に、旅館やホテル業界でもインバウンド需要の波に乗り、経営の安定化が期待されています。

支援制度の強化が求められる

政府は地域企業の存続を支援するため、私的整理スキームの導入や新たな法制度の設立を進めています。「早期事業再生法」の施行を含むこれらの取り組みは、企業が経営課題を乗り越える手助けとなることが期待されています。しかし、実際には公租公課の滞納や計画の立て遅れなど、再建が難しい事例も少なくありません。特に、時代の変化に即応できず手を打つタイミングを逃してしまう企業が増えていることが懸念されています。

経営者の意識と体制の強化

このような状況下で最も重要なのは、経営者自身が早期に課題を把握し、対策を講じる意識が求められます。また、弁護士や金融機関、コンサルタントといった支援者のスキルと体制の強化も急務です。本業での収益力向上が見込めなければ、債務削減等の私的整理を行ったとしても根本的な再建は難しいでしょう。これからの企業運営において、この点が大きなカギを握ることは間違いありません。