2025年度の新型コロナワクチン定期接種が10月1日から開始されましたが、認知率が驚くべきことに29.5%と、前年の2024年度定期接種(60.3%)と比べて約半分に減少しました。これは生活者の健康に関連する重要な問題を示唆しています。
調査は、埼玉県さいたま市に拠点を持つヒューマン・データ・ラボラトリが、65歳以上の全国男女2500名を対象に実施しました。定期接種の対象者を知っている人が減少した背景には、2年目を迎える定期接種の広報活動の減少があると考えられます。また、インフルエンザの流行が影響し、関心が薄れていることも一因です。
今年度の定期接種は、国からの助成金制度が終了し、各自治体の予算だけで運営されるため、自己負担額が自治体によって異なります。調査の結果、最も高い自己負担額が1万3600円だった茨城県笠間市に対し、東京都の6区では無償で提供されています。このように、自治体間で大きな差があるため、住民への情報提供が不十分な自治体では、認知率の低下がさらに進む可能性があります。
健康状態が高齢者に特に重要であることから、ワクチン接種の認知率が低いことは、ワクチン接種率のさらなる低下を引き起こし、高齢者の重症化や死亡リスクの増加につながる懸念があると指摘されています。一般社団法人日本感染症学会などの団体は、高齢者において重症化リスクが依然として高いことを強調しています。
一方で、2024年も新型コロナによる死亡者数は3万5865人と高い水準が続いており、年度間のデータを比較すると、インフルエンザによる死亡者2855人の約12倍に達しています。これから冬にかけて、感染症に対する対策がより重要になってきます。
佐藤昭裕医師(KARADA内科クリニック 五反田院)は、新型コロナウイルスに対する危機意識が薄れつつあり、一般的な風邪として受診する人が減少しているとの懸念を示しています。また、インフルエンザの流行が優先されており、新型コロナの診断が遅れることも考えられます。
このような状況下で求められるのは、ワクチン接種だけでなく、新型コロナウイルスやインフルエンザに対する基本的な感染症対策です。外出時にマスクを着用し、手洗いや換気を徹底することが基本的な防止策となります。体調が悪い時には無理をせず、速やかに医療機関を受診することが重要です。
新型コロナウイルスは収束しているわけではなく、変異株が出現する中で、定期接種を含めた予防対策が今後も続いていく必要があります。特に高齢者の方々には、継続的な情報提供が重要であり、自治体の取り組み次第で認知率に大きな影響が出てくることを忘れてはなりません。
この様な状況を踏まえて、冬本番に向けた感染症対策をしっかりと行い、必要なワクチン接種を行うことが、地域社会全体の健康を守るためにも重要です。