血液中のサイトカインシグネチャーでがん免疫療法の効果予測が可能に!
近年、がん免疫療法として注目されている免疫チェックポイント阻害薬は、患者によって効果が異なり、副作用のリスクも伴うため、効果の高い患者を事前に選別することが重要な課題となっています。神奈川県立がんセンターなどの研究グループは、この課題解決に向け、画期的な研究成果を発表しました。
研究グループは、機械学習を用いて、血液中のサイトカインと呼ばれるタンパク質を網羅的に解析することで、免疫チェックポイント阻害薬の長期的な治療効果を予測できる「サイトカインシグネチャー」を発見しました。この技術は、治療前の血液検査で患者個々の免疫応答を予測することで、効果の高い治療法を選択することが可能になります。
研究の詳細
研究では、抗PD-1/PD-L1抗体治療を受けた進行・再発非小細胞肺がん患者222例を対象に、治療開始前に採取した血液中のサイトカインを網羅的に分析しました。機械学習を用いて、93種類のサイトカインの中から、治療効果と関連する重要な14種類のサイトカインを特定しました。これらのサイトカインの組み合わせからなるシグネチャーを「preCIRI14」と名付け、これを用いて患者の予後を予測するモデルを構築しました。
その結果、preCIRI14モデルは、患者の予後を高い精度で予測できることが示されました。さらに、患者の年齢、性別、病期などの臨床情報も加えたモデル「preCIRI21」を構築したところ、予測性能がさらに向上しました。
個別化がん免疫治療への貢献
この研究成果は、がん免疫療法における個別化医療の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。
- - 効果の高い患者を選別: 治療効果の高い患者を事前に特定することで、効果的な治療法を選択し、治療成績の向上に繋げることができます。
- - 不必要な治療の回避: 副作用のリスクが高い患者に対しては、事前にそのリスクを予測することで、不必要な治療を回避し、患者のQOLを向上させることができます。
- - 医療費の抑制: 効果の期待できない患者への治療を回避することで、医療費の無駄遣いを防ぐことができます。
今後の展望
本研究成果は、臨床応用に向けてさらなる検証を進める必要があります。今後は、より多くの患者を対象とした臨床試験を実施し、その有効性と安全性を確認していく予定です。
また、本研究で用いられた機械学習の手法は、他の種類のがんや、他の免疫療法にも応用できる可能性があります。今後、さまざまな分野への応用が期待されます。