NECによる水管橋点検の新時代
2024年の夏、NECは札幌市水道局と協力し、人工衛星画像とAIを組み合わせた水管橋の異常点検についての実証実験を行いました。この取り組みは、経年劣化が進む橋梁や水管橋の健全性を適切に見極めるための新たな手段として、注目されています。
実証実験の背景
日本全国には約72万の橋が存在し、これらの構造物は5年ごとに定期点検が義務付けられています。しかし、専門家の不足や特殊機材の調達、作業の長期化に伴う費用増加は、効率的な点検の大きな課題となっていました。特に、長い水管橋の目視点検は困難であり、特殊車両を使用する必要があったため、大きなコストを招いていました。
NECの技術
この課題を踏まえ、NECが開発したのは、人工衛星のリモートセンシング技術とAIを利用した点検システムです。この技術は、落橋などの重大損傷を初期段階で発見できることを目的としており、今回の実証では豊平川第2水管橋(全長234m)の点検が実施されました。
実験の結果、このシステムによって水管橋の鉛直変位および水平変位を誤差5mm程度で測定可能で、特に垂れ下がりの兆候がないことが確認されました。また、疑似的に設定された3mm以上の垂れ下がりも検知できたとのことです。
経済的な利点
実証実験では、2016年以降の8年分のデータ分析が可能であり、AIを活用することで多頻度な点検をコストをかけずに実現しました。従来のドローンを用いた点検方法に比べ、経費を削減できる点が大きな利点です。
未来への期待
この事業は、内閣府の「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の一環として進められており、今後のインフラ管理における新たな標準となる可能性を秘めています。NECの技術は、さまざまなインフラの点検業務においても応用可能であり、さらなる発展が期待されるところです。これからも、効率的かつ精度の高い点検技術の進化が、我々のインフラを支える重要な要素となっていくでしょう。