現代の職場では、部下は不安や不満を抱えながらも、本音を隠す傾向にあります。以前のように、仕事や上司に対する不満を率直に語り合うことは少なくなり、表面上は良好な関係を保ちながらも、心の距離を感じることが増えているのではないでしょうか。
株式会社ジェイフィールの代表取締役コンサルタントである片岡裕司氏と、同社コンサルタントの山中健司氏による共著『なぜ部下は不安で不満で無関心なのか』は、そんな現状を鋭く捉え、部下と良好な関係を築き、組織全体の活性化を図るための新しいマネジメント手法を提示しています。
本書では、部下が不安や不満を抱える原因を分析し、その解決策として、5つのステップからなる新しいマネジメント手法を提案しています。
ステップ1:「目標のすり合わせ」ではなく「目的を育む」
従来のマネジメントでは、上司が部下に目標を指示し、その達成度合いを評価することが一般的でした。しかし、本書では、単なる目標の達成ではなく、部下が仕事を通じて何を成し遂げたいのか、その「目的」を理解し、共有することが重要だと説いています。部下が自分の仕事に「目的」を見出すことで、主体的に行動し、成長へと繋がっていくのです。
ステップ2:「強み」ではなく「持ち味」を活かす
従来のマネジメントでは、部下の「強み」を伸ばすことに重点が置かれてきました。しかし、本書では、部下の「強み」だけでなく、個々の「持ち味」を理解し、活かすことが重要だと強調しています。部下の「持ち味」を活かすことで、個性と創造性を発揮できる環境を作り出し、組織全体の力を高めることができるのです。
ステップ3:「内発的動機」ではなく「内面化動機」を引き出す
従来のマネジメントでは、部下の「内発的動機」を高めることが重要視されてきました。しかし、本書では、外部からの刺激ではなく、部下自身が仕事や組織に「内面化動機」を持つことが重要だと主張しています。部下が自身の価値観や目標と仕事の目的を結びつけ、内側から湧き上がる「やる気」を引き出すことで、持続的な成長を促すことができるのです。
ステップ4:「成功思考」ではなく「成長志向」を育む
従来のマネジメントでは、部下に「成功思考」を植え付けることが重要視されてきました。しかし、本書では、失敗を恐れない「成長志向」を育むことが重要だと訴えています。失敗から学び、成長していく過程を大切にすることで、部下の潜在能力を最大限に引き出し、組織全体の成長に繋げることができるのです。
ステップ5:「明確に目標を絞る」のではなく、多様な視点から「可能性」を広げる
従来のマネジメントでは、部下に明確な目標を指示し、その達成に焦点を当ててきました。しかし、本書では、目標に縛られることなく、多様な視点から「可能性」を広げることを推奨しています。部下が自由に発想し、挑戦することで、新たな価値を生み出し、組織全体のイノベーションを促進することができるのです。
本書は、管理職だけでなく、一般社員にとっても、組織の中でどのように自分らしく働き、成長していくのかを考えるためのヒントが詰まっています。部下とのコミュニケーションに悩む管理職、職場で本音を言えずモヤモヤしている一般社員、組織風土改革に関わるすべての人に読んでほしい一冊です。