ボストンの研究チームが中性原子量子コンピュータで革新を実現

量子コンピュータの未来が変わる



2025年7月14日、米国マサチューセッツ州ボストンにあるQuEra Computingと、ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、論理量子ビットを用いた魔法状態蒸留の実験的実証に成功したことが発表されました。この成果は、量子コンピュータの実用化に向けた重要なマイルストーンであり、条件が整えば従来の問題を劇的に解決する可能性を秘めています。

量子コンピュータの基礎



量子コンピュータは、量子ビット(qubit)と量子論理演算を駆使してデータを処理します。大規模なアルゴリズムを実現するためには、特に誤り率が極めて低い量子論理演算が求められます。この領域で中心的な役割を果たすのが、誤り訂正符号で保護された論理量子ビットです。しかし、現行の多くの量子誤り訂正符号が対応できるのは、Cliffordゲートと呼ばれる基本的な論理演算のみに限定されています。

Cliffordゲートではユニバーサルな量子計算を達成できないため、その先にはいわゆる「魔法状態(マジックステート)」が必要です。これらの魔法状態は高品質な量子計算を実現するためのリソースとなりますが、生成は非常に困難で、高コストなプロセスです。これが量子コンピュータの実用化に向けた多くの障壁を作ってきました。

新たな方法論の確立



QuEraの研究チームが実施した実験では、論理量子ビットを用いて魔法状態蒸留が成功し、その結果、今まで以上に誤り耐性の高い魔法状態が生成されました。具体的には、同社のGeminiと呼ばれる中性原子量子コンピュータを使用して、5つの不完全な魔法状態から1つの高品質な魔法状態を得るという蒸留プロトコルを実行しました。これにより、出力される魔法状態の忠実度が向上し、誤り耐性のある魔法状態蒸留が実証されました。

実用化に向けた期待



この実験の成果は、今後の量子計算における可能性を大きく広げます。具体的には、魔法状態が非Cliffordゲートの実現リソースとなることで、理論上実現可能な完全なユニバーサルな量子演算ができるようになります。また、論理量子ビットにおける蒸留プロセスが誤りを抑制することで、さらなる規模の拡大が期待されます。

コメントから見る研究意義



論文責任著者のSergio Cantu氏は、「論理魔法状態蒸留は長年ブレークスルーを期待されてきたものであり、今回の成果はその実現に向けた大きな一歩です」と語り、実験に対する期待の高さを示しました。

また、QuEraのPresidentである北川拓也氏は、スケーラブルな誤り耐性の実現が量子情報科学の中心課題であることを強調し、今回の実証が重要な位置を占めることを説明しました。さらに、ハーバード大学のMikhail Lukin教授は、動的再配列や任意のビット間エンタングルメントが可能である中性原子アレイの利点を活かし、実験実施に成功したことの意義を評しました。

今後の展望



この成果を受けた研究チームは、さらに多くの論理量子ビットを操作し、量子計算の実用化に向けた「魔法状態工場」の進化が期待されています。公開ウェビナーも予定されており、興味を持つ方は是非登録を行ってください。

この革新的な研究は、今後の量子コンピュータにおける新たな時代を切り開くものでしょう。ますます冒険的かつ多様化する量子科学の世界を目の当たりにする時が近づいています。

会社情報

会社名
株式会社クエラコンピューティングジャパン
住所
東京都中央区日本橋3-9-1日本橋三丁目スクエア11階
電話番号
080-5497-8282

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