太陽電池防災シートが斜面を守る
2023年10月、株式会社奥村組と国立大学法人岩手大学は、茨城県つくば市において「太陽電池防災シート」の実証試験を開始しました。このシートは、ペロブスカイト太陽電池などの次世代の太陽電池を搭載し、発電しながら斜面の災害を防ぐ画期的な技術です。
背景
日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現する方針を掲げ、太陽光発電の導入が進んでいます。しかし設置可能な土地が不足しており、再生可能エネルギーの発展を妨げる要因となっています。加えて、年間約1,200件の斜面災害が発生しており、その原因は降雨による地盤強度の低下が主な要因です。これまでの対策は主に抑止工や抑制工によるものでしたが、降雨による地盤強度の改善が欠如していました。
こうした背景から、大河原教授が考案した太陽電池防災シートは、発電機能と雨水を防ぐ遮水機能を結びつけ、斜面の有効活用を目指しています。
検証実施内容
実証試験は岩手大学の指導のもとで進められ、奥村組技術研究所の盛土斜面に設置された遮水シートには、フィルム状のペロブスカイト太陽電池とシリコン基盤のローラブル太陽電池が組み込まれています。このシートを用いて以下のポイントを検証します。
1.
発電性能の確認:斜面に設置した際の太陽電池の発電効率とその性能の変化を調査。
2.
施工法の確立:斜面へのシートの安全で効率的な設置方法を検証。
3.
耐久性評価:自然環境下でのシートと電池の耐久性を評価。
4.
防災性の確認:設置の有無によって盛土内の間隙水圧がどう変化するかを測定し、浸透抑制効果を比較。
これにより、発電しながら同時に斜面を守る新しいアプローチがどれだけ機能するのかを明らかにします。
今後の展望
実証試験が成功した場合は、斜面に限らず傾斜地や未利用スペースにまで展開可能な技術としての可能性を開くことになります。災害に強いインフラを構築しつつ、カーボンニュートラルを実現するための重要な解決策になると期待されています。
お問い合わせ
本プロジェクトに関する詳細は、株式会社奥村組の技術本部技術研究所へお問い合わせください。社名や役員情報も含め、大変多様な事業を展開しています。他にも、国立大学法人岩手大学がこの革新的な技術の開発に寄与しています。
持続可能な未来を目指す取り組みが、今後どのように進展していくのか、その行方が注目されます。