子宮内膜と癌の関係
2022-02-18 17:25:50

子宮内膜のゲノム解析が示す癌関連遺伝子の新たな真実

子宮内膜と癌の新たな関係



近年の研究により、正常な子宮内膜内で癌に関連する遺伝子の変異が存在し、これがさまざまな病態に影響している可能性が示されています。本記事では、この重要な研究成果を詳しく解説します。

Ⅰ. 研究の背景



人間の子宮内膜は月々の月経を通じて剥離と再生を行う特異な組織ですが、その中で発生する腺管の異常は、子宮内膜症や子宮体癌などの疾患に密接に関係しています。本研究グループは、正常な子宮内膜腺管組織に多様な癌関連遺伝子の変異が存在することを先に示していますが、これらの変異がどのように増加し、腺管の分布に影響を与えるのかは不明でした。また、子宮内膜の3次元構造も調査されており、基底層が地下茎構造によって繋がっていることがわかっています。

Ⅱ. 研究の概要



研究は、手術で子宮内膜組織を取得した女性32人から得た891本の腺管を対象に、次の3つの解析を行いました:

1. 腺管の癌関連遺伝子変異が加齢や月経回数に基づいて蓄積するかを検討。
2. 遺伝子変異を持つ腺管の分布を調査。
3. 腺管の3次元的な構造と遺伝子変異の関係を解析。

Ⅲ. 研究の成果



最初のステップである891本の腺管の解析では、半分以上に癌関連遺伝子の変異が認められました。特に、PIK3CAやKRASという遺伝子に変異が多いことが分かりました。年齢や累積月経回数が増えるにつれ、これらの遺伝子変異も増加します。

続いて、子宮内膜を区域分けし、同じ遺伝子変異をもつ腺管がクラスターを成していることが発見されました。これは、特定の遺伝子変異を持つ腺管が隣接した区域にまたがって分布していることを示す重要な発見です。

次に、腺管の3次元構造についての解析では、基底層に存在する地下茎構造が、腺管の遺伝子変異を広げるための重要な役割を果たしていることが確認されました。この地下茎を介して、腺管が共通の遺伝子変異を持つことがわかり、モノクローナルな集団が形成されているのです。

Ⅳ. 今後の展開



現代女性が経験する月経回数の増加により、子宮内膜関連疾患のリスクも上がっています。この研究結果は、癌関連遺伝子の蓄積がどのように健康に影響するのかを理解するための一歩となり得ます。また、ホルモン治療が癌関連遺伝子の蓄積に与える影響を探ることで、将来的には不妊や子宮体癌の予防法の開発に繋がることが期待されています。

Ⅴ. 研究成果の公表



この研究成果は、2022年2月17日にNature Communications誌で発表されました。研究チームは、子宮内膜内の癌関連遺伝子の詳細なメカニズムを解明するために尽力しています。

以上の研究は、女性の健康にとって非常に重要で、今後の研究へ大きな示唆を与えるものとなっています。

会社情報

会社名
公益財団法人 佐々木研究所
住所
東京都千代田区神田駿河台2-2
電話番号
03-3294-3286

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