微生物の力で安全にカーボンナノチューブを分解する新手法
新技術の概要
最近、名古屋大学の堀教授らの研究チームが、カーボンナノチューブ(CNTs)を分解する画期的な手法を開発しました。この新手法では、Shewanella属の細菌を活用し、特に単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)を生物学的に分解します。具体的には、無酸素環境下で鉄(III)を鉄(II)に還元する一方、有酸素環境下では酸素を過酸化水素に還元する能力を利用し、フェントン反応を高効率で誘導します。この研究成果は、2023年11月30日付の国際学術雑誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。
研究の背景
カーボンナノチューブは、その特異な物理特性から様々な産業分野で利用されていますが、同時に健康や環境に対するリスクも指摘されています。針状の構造を持つCNTsは、特に発がん性が疑われており、周囲の生態系や微生物にも毒性を及ぼす可能性があるため、安全な処理方法の確立が求められていました。これまでも、CNTsの分解に関するいくつかの研究が行われてきましたが、主に酵素反応に頼る手法であり、実際にはフェントン反応が鍵となっていることが明らかとなりました。これを踏まえて、堀教授らはShewanella属を活用した新しい分解手法を開発しました。
新たに確立された分解プロセス
今回の研究では、Shewanella属が持つ特性を最大限に活かし、実験条件として30 µg/mLのO-SWCNTsと10 mMのFe(III)クエン酸塩を使用しました。21時間の無酸素条件と3時間の有酸素条件のサイクルを行った結果、90日間でO-SWCNTsの56.3%を分解することに成功しました。この成果は、Shewanella属によるフェントン反応がCNTsの分解において非常に有効であることを示すものです。
環境への貢献
ナノテクノロジーの利用が進む中で、CNTsの安全な処理がますます重要となる中、この新技術はその要求に応えるものとなります。研究チームは、環境中に存在する微生物を用いて、持続可能な方法でCNTsを分解する道を開いたといえるでしょう。この方法は、今後の廃棄物処理技術の向上や環境汚染軽減、さらには人間および生態系の健康リスクの軽減に寄与することが期待されています。
企業のビジョン
この研究を進めた株式会社フレンドマイクローブは、“微生物を友だちに”という企業理念のもと、微生物やその酵素を活用した技術の実用化を目指しています。持続可能な社会の実現に向けて、今回の研究成果を生かした技術の普及が期待されています。
詳細な会社概要は以下の通りです。
- - 社名: 株式会社フレンドマイクローブ
- - 本社所在地: 愛知県名古屋市千種区千種2-22-8 NALIC 104
- - 代表取締役: 蟹江純一
- - 設立: 2017年6月13日
- - 事業内容: 微生物関連受託研究事業、油関連環境事業
公式ウェブサイト:
フレンドマイクローブ