経営資産承継:会社の記憶をAIで活かす新たな挑戦
現在、多くの企業が直面している課題、事業承継。それは単に財務資産や株式の引き継ぎではなく、経営者や従業員が築いてきた「会社の記憶」を次世代にどう引き継ぐかという重要な問題です。大阪府に拠点を持つ株式会社HR Heroと株式会社統理は、AIを活用した新しい「経営資産承継」事業に共同で取り組むことを発表しました。
「経営資産承継」の背景
事業承継の際、経営者の判断や企業文化、過去の経験など「見えない知」が失われることが多いです。特に経営者の交代やベテラン社員の退職によって、意思決定の背景にある文化や文脈が消えてしまうという事態が発生しやすくなります。この課題に対処するため、HR Heroと統理は目に見えない資産を明確にし、AIを活用してそれを蓄積する仕組みを構築しました。
新たな承継モデルの形成
「経営資産承継」プロジェクトでは、経営者や幹部、現場責任者、専門家など、社内外に散在する知識や経験をAIで抽出し、それを蓄積することを目指しています。具体的には次のような手順で進められます。
1.
経営関与者の特定と日常ログ取得: 組織の構造を見極め、重要な知識を持つ人物から普段の業務における音声・資料等のログを取得。
2.
AIによる重要判断の抽出: AIが経営上重要な出来事や判断候補を自在に抽出。
3.
対話による背景の言語化: 経営者や幹部と対話し、AIでは拾えない意思決定の背景を明確にします。
4.
人が確定: 整理された候補の残す・修正する・残さないを人間が確認します。
5.
経営資産として蓄積: 最終的に人物、出来事、根拠、結果をデータベースとして保存します。
このプロセスによって、経営判断の基準や過去の経営課題が体系化され、企業の「記憶」を次世代に残すことが可能になります。
会社固有の経営基盤を残す工夫
この新しい取り組みの中では、企業が持つ特有の「4つの経営基盤」を残すことに重点を置いています。判断基準や経営課題、意思決定の背景、関連者・証拠記録など、経営の核心を次世代に引き継ぎます。これにより、経営資産として蓄積された情報を「原記録アーカイブ」や「経営資産台帳」として具体化し、組織図や経営資産の地図(Company Blueprint)として可視化することが実現可能となります。
経営者の声:新たな取り組みへの想い
【株式会社統理 代表取締役 大西結菜氏】は、経営資産承継を本気で進める理由として自身の家族の経験を挙げました。彼女は、「社長の頭の中には多くの判断や経験が蓄積されているが、それが形に残らないまま失われていくことに対する危機感がある」と語ります。
一方、【HR Hero代表取締役 三浦由貴氏】は、「経営トップが大切にしてきた価値観や判断基準を組織全体に共有できないことが、急成長する企業の成長を脅かす要因である」と指摘しています。両者が融合した知見が今後の事業承継に革新をもたらすことでしょう。
先行実証(PoC)パートナーの募集
現在、実際の企業での導入検証に参加できるパートナーを限定3社募集しています。対象企業は、創業者への意思決定依存度が高い企業や、早期に事業承継を控える企業などです。内容としては経営知の棚卸し、経営関与者マッピング、資産化プロセスの実施が含まれます。この取り組みにより、企業の「見えない記憶」を形にし、次世代に繋ぐための大きな一歩となることでしょう。