生体材料ガラスの新たな可能性
2025-09-11 14:06:19

抗菌性と骨形成促進を兼ね備えた生体材料ガラスの開発

抗菌性と骨形成促進を両立させた新しい生体材料ガラス



国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は、抗菌性と骨形成促進機能を兼ね備えた生体用ガラスを開発しました。この技術は、歯科医療や骨欠損補填材料としての応用が期待されています。共同研究者には、中部大学の櫻井教授、大阪大学の中野教授、名古屋工業大学の春日名誉教授が名を連ねています。

開発の背景と目的


まず、本研究が行われた背景には、生体材料に対する高まるニーズがあります。1960年代からの研究により、生体と直接接触しても有害作用をもたらさない生体適合材料が開発されたものの、近年では特に細胞活性化による組織再生が求められるようになりました。その中でも、生体用ガラスは、無機イオンの溶出により細胞活性化を促し、骨形成を支援する材料として注目を集めています。

新たな生体材料の特徴


今回開発されたのは、MgO-ZnO-P2O5-SiO2系のガラスです。これまでのリン酸塩ガラスは、PO4四面体が酸素の共有結合により長い鎖状構造を持つのに対し、今回のガラスは全く異なる網目構造を持っています。この特異な構造が、優れた抗菌性と骨形成促進機能を両立させる鍵となっています。

特に亜鉛イオンの溶出を適切に制御することが重要であり、過剰な溶出は細胞に毒性を及ぼす可能性があります。新しいガラスは亜鉛をZnO4四面体として取り込み、それを結合することで細胞への溶出量を抑えました。この結果、細胞毒性を示さない範囲での亜鉛の活用が可能となったのです。

抗菌性と骨形成機能の評価


抗菌性に関して、大腸菌や黄色ブドウ球菌を培養した結果、ウイルスがいない条件と比較して菌数が2桁以上減少したことが確認されました。この結果は、新しいガラスが抗菌性を保有していることを示しています。

また、骨形成促進機能についても、ヒト骨芽細胞を用いた実験で、遺伝子発現が従来のガラスと比べて非常に高いことが示されました。特に、オステオカルシン(OCN)の発現量は約1.8倍に達しました。これにより、細胞が骨を形成する過程で新たな発見が得られる可能性があります。

今後の展望


この新しい生体用ガラスは、歯科用材料や組織工学における細胞足場材料としての利用が見込まれます。高い抗菌性と骨形成機能を持つガラスの開発は、医療分野における革新的な進展をもたらすことでしょう。研究の詳細は、2025年9月に発表される予定です。今後の進展に注目が集まります。


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