非侵襲的血流測定技術の進歩:出血性ショックの早期診断に向けて
近年、医療分野において非侵襲的診断技術の重要性が増しています。特に、重症患者に見られる微小循環の変化を正確かつリアルタイムで評価することが、迅速な治療判断につながることが期待されています。この分野での新たな研究成果として、明治大学と国立循環器病研究センターの共同グループが、拡散相関分光法(DCS)を用いた非侵襲的な血流測定技術を開発したという報告があります。
研究の概要
この研究では、出血性ショックモデルを用いて、犬を対象に微小循環の変化をモニタリングしました。研究チームは、皮膚や筋肉の血流をDCSで計測し、その results を従来の血流指標として用いられる指標と比較しました。
その結果、DCSによって得られる血流指標(BFI)は、従来の微小循環指標と強い相関があることが分かり、特に乳酸値の上昇を高い特異度で予測できることが示されました。
背景と問題意識
「ショック」という状態は、臓器に十分な血液が届かない危険な状態です。特に、心臓に近い太い血管の血圧が正常でも、細い血管の機能が早期に低下していることがあります。従来は乳酸値や皮膚温、混合静脈酸素飽和度などの指標が用いられていましたが、これらには侵襲性や時間的な遅れがあるため、より良い代替手段の開発が求められていました。
研究の成果
DCSは、近赤外光の散乱を解析する方式で、非侵襲的かつ連続的に血流をモニタリングします。本研究において、出血性ショックを誘導した犬のモデルを用い、BFIが出血量の増加と相関していることが確認されました。また、輸血によってBFIが回復する様子も観察され、これによりDCSの有用性がさらに裏付けられました。
研究の意義
この研究は、重症患者の早期微小循環不全をいち早く発見し、迅速な治療判断を促進するための新技術の開発に貢献することが期待されています。さらに、微小循環のモニタリングが可能な医療機器の実用化や、他の重篤な循環不全への応用も視野に入れた研究が続くことが重要です。
まとめ
今後は、ヒト臨床における実用化が進むことで、DCS技術が集中治療現場において重要な役割を果たすことが期待されます。実際の臨床現場での応用を早期に推進することが、将来的には多くの患者の命を救うことにつながるでしょう。