多様性を活かすための新たな視点
近年、多様性は組織や企業において重要なテーマとして注目されています。しかし、多様性は単なる数や形式に留まらず、効果的に活用するためには、社員の価値観やスキルといった異なる側面を考慮する必要があります。本稿では、パナソニック コネクト株式会社と明治大学商学部の加藤拓巳准教授による共同研究の成果をもとに、多様性の持つ複雑さとその活用方法について考察したいと思います。
多様性は諸刃の剣
多様性には、組織のパフォーマンスを促進する可能性もあれば、阻害する要因にもなり得るという特徴があります。これは、多様性の効果を享受するためには、それを生かすための適切な環境が整備されることが不可欠であることを意味します。しかし、これまでの研究では、主に年齢、性別、国籍などの属性の多様性のみに焦点を当てることが多く、他の重要な側面が見落とされてきました。
研究の概要
本研究では、多様性を「属性」「価値観」「スキル」の3つに分類し、社員の態度を評価するための調査を行いました。対象となったのは、パナソニック コネクト株式会社の社員3,000名です。この調査から得られた結果は非常に興味深いものです。
属性多様性と社員態度
まず、属性多様性のみでは社員の態度に有意な影響を及ぼさないことが確認されました。このことから、単に多様な人材を集めるだけでは、求められている効果は得られないことが示唆されます。
価値観とスキルの組み合わせ
一方で、属性多様性に価値観多様性を組み合わせることで、仕事の意義に正の影響を与えていることが明らかになりました。また、属性多様性とスキル多様性の組み合わせは、仕事の意義と組織への帰属意識を高める効果があることも確認されました。
しかしながら、属性多様性とスキル多様性の掛け合わせは、社員同士の競争を激化させ、結果としてバーンアウトのリスクを高める可能性があることも分かっています。このため、企業はこれらの側面に注意を払いながら、多様性をひとつのツールとして有効活用する必要があります。
企業としての対応
現在の状況を踏まえると、企業は属性多様性に過度な期待をしてはなりません。多様な人材を魅力的に見せるだけでなく、彼らの価値観やスキルを理解し、最大限に引き出すことが求められています。企業の人材マネジメントにおいては、目に見える多様性だけでなく、見えにくい部分にも目を向けることが成功の鍵となるでしょう。
研究成果の意義
「Perceived diversity and skill diversity to utilise demographic diversity: Evidence from the factors of employee attitudes in a large Japanese company」という研究は、2025年6月20日にHumanities and Social Sciences Communicationsに掲載されます。この研究は、多様性に対する新たな理解をもたらし、企業の人材マネジメントに革命を起こす可能性を秘めています。
以上のように、多様性を活かすためには、ただ人材を集めるのではなく、彼らの価値観とスキルに目を向けることが重要です。これにより、組織のパフォーマンスを向上させるための第1歩を踏み出すことができるのです。