多剤耐性結核の脅威
2012-03-21 17:34:29

世界を脅かす多剤耐性結核の蔓延:MSFが国際社会への協力を呼びかける

世界を脅かす多剤耐性結核の蔓延:MSFの警鐘



3月24日の世界結核デーを前に、国際医療人道支援団体である国境なき医師団(MSF)は、深刻化する多剤耐性結核(MDR-TB)問題への対策強化を訴える声明を発表しました。MDR-TBは、通常の抗結核薬が効かない耐性菌による結核であり、世界的な脅威となっています。

薬剤耐性結核の現状:治療の困難さと国際的な課題



不適切な治療や治療の中断などが原因で発生する薬剤耐性結核は、治療が非常に困難です。副作用が強く高価な薬剤を15種類以上使用し、治療期間も最長2年に及びます。完治率も低く、多くの患者が苦しんでいます。さらに、既存の抗結核薬は20世紀半ばに開発されたものが多く、強い副作用を伴うことも問題となっています。

新しい簡易診断検査法もコスト高により普及が進んでおらず、特に医療資源が限られた途上国の僻地では、迅速な診断が患者の生死を分ける重要な課題となっています。

国際的な資金援助の不足も深刻な問題です。世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)による支援が縮小するなど、資金不足により、結核対策は大きな打撃を受けています。世界全体の結核患者のうち、適切な薬剤耐性診断を受けているのはわずか5%、適切な治療を受けているのは10%に過ぎません。

各国の状況:南アフリカ、インド、ミャンマー



結核感染率の高い南アフリカのクワズル・ナタール州では、MSFが導入した新しい簡易診断検査により診断件数が大幅に増加しましたが、それでもリファンピシン耐性患者が13.2%にのぼるなど、依然として深刻な状況です。

インドでは、医師の処方箋なしで薬が購入できる状況や、無秩序な医療ビジネスが薬剤耐性菌の蔓延の一因となっています。毎年約9万9000人がMDR-TBに感染すると言われますが、適切な治療を受けられるのはわずか1%です。

ミャンマーでは、毎年約9300人がMDR-TBに新たに感染していますが、治療を受けたのは300人強にとどまっています。国際的な資金援助の不足により、5年間で1万人のMDR-TB患者を治療するという計画も危ぶまれています。

MSFの提言:抜本的な対策の必要性



MSFは、各国政府、資金提供者、製薬会社に対し、以下の対策を強く求めています。

効果的で安価な診断法と治療薬の開発
投薬期間と副作用を軽減した治療法の開発
小児患者向けの薬剤の開発
迅速な診断を可能にするポイント・オブ・ケア検査(POCT)の普及
* 保健分野における規制の強化

MSFインターナショナル会長のウンニ・カルナカラ医師は、「世界の95%の結核患者が適切な診断を受けていません。この命に関わる病気への対策には、新しい薬、研究、治療プログラム、そして各国政府の積極的な取り組みが不可欠です」と訴えています。

結核:未だ続く脅威



結核は古くから知られる病気ですが、いまだ世界で2番目に死亡者が多い感染症です。WHOの報告書によると、2010年には世界で約1200万人が結核に感染したと推定されています。薬剤耐性結核の増加は、この問題をさらに深刻化させています。国際社会全体の協調と、抜本的な対策が急務と言えるでしょう。

会社情報

会社名
国境なき医師団(MSF)日本
住所
東京都新宿区馬場下町1-1 FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123

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