未来を変える教育の力
NPO法人結び手と近畿大学の山﨑泉研究室がタッグを組み、インドでの倫理・モラル教育を推進する新たなプロジェクトをスタートさせました。この取り組みは、暴力や詐欺、差別が常態化した社会での教育のあり方を見直し、未来の加害者や被害者を作らないという強い信念から生まれました。具体的には、約1,500人の子どもたちに倫理教育と非認知能力の育成を通じて、質の高い教育を届けていくことを目指しています。
教育現場のリアルな課題
インド・ビハール州を中心に活動する結び手は、経済的貧困のみならず、構造的な差別や汚職、ジェンダー暴力といった深刻な社会課題を抱えています。こうした地域で、結び手は基礎教育の提供に力を入れ、特に倫理・道徳教育を重視しています。なぜなら、詐欺や汚職、女性差別、暴力という社会的問題の多くは、教育を受けていないことから生まれるからです。子どもたちが「正しい行動」や「他者との共感」を学ぶ機会を得られなければ、それが社会の非倫理性を助長してしまいます。結び手ではこうした背景を受け、倫理的判断力と行動力を育むカリキュラムを作成し、授業に組み込む取り組みを始めています。
学術と実践の融合
本プロジェクトでの共同研究者である山﨑泉准教授は、モラルデベロップメントに関する研究を広く行い、特にゲームやストーリーテリングを通じた教育手法の開発に注力しています。彼は、結び手が実施している教育の現状を深く理解しつつ、子どもたちの道徳的判断や行動傾向についてリサーチを行います。そして、グローバルな先行研究と比較することで、より効果的な教育支援策を共創していきます。その成果は教育カリキュラムに反映されるだけでなく、国際論文発表や政策提言にもつながる予定です。
新しい連携の可能性
このプロジェクトは単なる共同研究にとどまらず、現地での調査やフィールドワークを結び手が実施し、大学側が学術的なフレームを提供するという新しい形の連携となっています。こうしたアプローチにより、アカデミアとNGOの理想的な連携モデルを形成しています。また、この取り組みは他大学との将来的な連携への道を開く先駆的な試みとも位置づけられています。
NPO法人結び手の代表、福岡洸太郎氏は、「現場の子どもたちは日々過酷な環境で夢を見ています。どのようにして“善く生きる”ことを学ぶのか、その答えを求めていきたい」と語ります。彼は、読み書きができる大人ではなく、暴力や差別に“ノー”と言える倫理観を持つ大人を育てたいと考えています。
未来に向けた展望
結び手は今後、より多くの教育研究者や大学、教育関連の企業との連携を広げ、インド現地での調査や実証事業を実施することを視野に入れています。CSRやSDGsの文脈での協働も積極的に進めていく予定です。このように、現地の課題と最先端の知見が交わることで、倫理と教育の未来は大きく変わる可能性を秘めています。
この連携が、新たな社会変革の第一歩となることを願っています。