戦時下「ラジオ」と放送人たちの「報国」:大森淳郎著『ラジオと戦争放送人たちの「報国」』が講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞!
2023年6月26日にNHK出版より発売された、大森淳郎・NHK放送文化研究所 著『ラジオと戦争放送人たちの「報国」』が、第46回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」を受賞しました。本書は、戦時中のラジオ放送に携わった人々の生き様を克明に描き、メディアの公共性と戦争責任について深く考察したノンフィクション作品です。
著者の大森淳郎氏は、NHKのドキュメンタリー番組ディレクターとして長年戦争中のラジオについて取材を重ね、NHK放送文化研究所の特任研究員も務めました。本書では、膨大な資料や証言、そして貴重な音源などを駆使し、戦時下における「ラジオ」というメディアがどのように機能し、人々に影響を与えていたのかを多角的に検証しています。
戦時下、「ラジオ」は国民に情報を提供するだけでなく、国家の政策を宣伝し、国民の士気を高めるための重要な役割を担っていました。本書では、ラジオの成長と軌を一にするかのように拡大した「戦争」を、放送人たちはどのように捉え、どう報じたのか、あるいは報じなかったのか、そしてどのように自らを鼓舞し、あるいは納得させてきたのかについて、具体的なエピソードや人物像を通じて深く掘り下げています。
さらに、戦後において、ラジオ放送はどのように変わり、あるいは変わらなかったのかについても考察し、現代社会におけるメディアの役割について重要な示唆を与えています。
本書は、576ページという重厚な内容ながら、スリリングかつ明確な文章で書かれており、読み手の心を強く惹きつけます。日本近現代史、メディアに興味のある方だけでなく、現代社会における放送人やメディア業界人にとっても必読の一冊です。
著者の思いと「新しい戦前」への警鐘
大森氏は受賞のコメントで、本書が「自らの戦争責任をきちんと検証して考えるという、本来ならばNHKがとっくにやっていなければならなかった仕事がやっと現れたとみなしていただけたのではないか」と述べています。そして、「メディアの公共性とは何かという問いは、NHKに限らず、今日、ますます重要になってきている」と、メディアの責任について改めて訴えています。
さらに、ウクライナやガザ地区での戦争、そしてタモリさんが警鐘を鳴らした「新しい戦前」への危機感についても言及し、本書が「メディアはどうあるべきなのか」を考える一助になればと願っています。
本書は、過去の歴史を振り返るだけでなく、現代社会におけるメディアの役割について深く考えさせられる貴重な作品です。ぜひ、この機会に手に取ってみてください。
書籍情報
『ラジオと戦争放送人たちの「報国」』
著者:大森淳郎、NHK放送文化研究所
出版社:NHK出版
発売日:2023年6月26日
定価:3,960円(税込)
判型:四六判上製
ページ数:576ページ
* ISBN:978-4-14-081940-1
商品詳細(NHK出版)
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