都市の鳥の警戒行動に関する革新的な研究
国立科学博物館の濱尾章二名誉研究員による最新の研究で、東京都心に生息する7種の野生鳥類が人に対して警戒心を持たない傾向があることが明らかになりました。この研究は、都市環境が野生動物の行動に与える影響についての理解を深める重要なもので、Journal of Ethology誌に発表されました。
研究の背景
「都会の鳥は人が近づいても逃げない」とはよく聞かれる言葉ですが、実際にその原因は何なのでしょうか?これまでは日本では都市環境下における鳥の警戒性の変化に関する研究が行われていませんでした。そこで、濱尾氏は東京都心で繁殖する鳥類を調査し、田舎の同種と比較することを試みました。
研究の方法
調査は、東京都心の緑地12か所と茨城県南部の農村地帯18か所で実施されました。人に対する警戒性は、研究者が徐々に近づいていった時、鳥が逃げ始める距離(逃避開始距離)を計測することで測定されました。この際、影響を与える可能性のある様々な要因も記録し、統計解析によってその影響を調整しました。
調査対象は、スズメやハシブトガラスなどの7種の鳥で、それぞれの個体の逃避行動がどのように異なるか分析されました。
研究結果の分析
結果として、すべての種において、東京都心の逃避開始距離は茨城のものよりも短くなっていることが分かりました。特にスズメについては、東京の個体の平均逃避距離はわずか4.2mであり、茨城の115個体の平均11.1mに対して大きく低下していました。これは、他の地域の先行研究と比較しても、かなり顕著な差であり、東京での警戒性の低下は非常に大きいことが示されました。また、東京に定着した時期との関係性が見られなかったことから、短期間での警戒性の変化が考えられています。
理論的な意義
この研究は、都市環境が野生動物の行動にどのように影響するのかを明らかにし、野生動物との関係性や人との軋轢を理解する上での新たな視点を提供しています。研究者たちは、都市に生息する動物が人に対して抱くリスク感覚について、今後さらに詳しい解明を待たれます。
今後の課題
研究は新たな問いを提示しています。それは、都市の鳥が人を恐れないのはなぜか、もしくは他の捕食者に対する警戒性がどう変化しているのかという点です。これらの問いに対する答えは、鳥類だけでなく他の動物行動や生態学の研究にとっても重要です。また、都市に適応した動物たちが、いかに環境に適応しているかについても今後調査が必要です。
まとめ
この研究から得られた知見は、野生動物と都市生活との関係についての重要な洞察をもたらしました。今後、この知識が都市の動物たちの生活をさらに理解し、人との関係をより良いものにする手助けとなることが期待されます。