関西大学大学院理工学研究科に所属する田原一輝氏および大洞康嗣教授の研究グループは、100nm以下の金属微粒子である金属ナノ粒子を用いた新しい触媒技術の開発に成功しました。この研究は、特にこれまで困難とされてきた1,3-ジエン化合物の効率的合成に関するものです。化学合成において1,3-ジエン化合物の脱水素カップリング反応は、今まで技術的に制約がありましたが、今回の成果によりその状況が大きく変わることが期待されています。
この研究の一環として、金属ナノ粒子の触媒作用やその形態変化に関する詳細な解明が行われました。従来の手法では多段階にわたる工程を必要とし、その中で廃棄物も発生していましたが、今回開発された新しい技術では、これが「一段階」に集約され、しかも廃棄物を出さないクリーンな合成法であるという点が評価されています。このメリットは、特に医薬品や農薬、ファインケミカルズといった高付加価値製品の分野での応用が見込まれます。
石油資源を基にした化学品の合成は、化学反応工程が大きな環境負荷を生むことが課題とされてきました。脱水素カップリング反応はそれに対する解決策として注目を集めていますが、反応を制御し正確に目的の生成物を得ることが難しかったのです。今回の研究成果によって、環境に優しい方法で物質を合成する新たな道が開かれたと言えます。
研究が掲載される国際的な学術誌である「Journal of the American Chemical Society」は、化学分野での影響力が大きく、この成果が広く注目されることが期待されています。新技術の開発によって、時間的・コスト的な負担が大幅に軽減されるため、社会への貢献度が高く、さらなる研究の進展が望まれます。
今後は、さらに多様な化学反応への応用が進められ、基盤技術としての位置づけが強化されることが期待されています。このような革新的な研究は、今後の産業界においても高い評価を得ることでしょう。
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