肝硬変患者の予後悪化:急性腎障害(AKI)とアミノ酸インバランスの関係
肝硬変は、肝臓の機能が低下し、様々な合併症を引き起こす重篤な病気です。その中でも、急性腎障害(AKI)は、肝硬変患者の予後を悪化させる深刻な合併症として知られています。岐阜大学医学系研究科の清水雅仁教授らの研究グループは、肝硬変患者におけるAKIの発症率と予後、そしてそのリスク因子について多機関共同研究を行いました。
研究のポイント
567名の肝硬変患者を対象とした研究で、AKIの発症率は高く、1年で14%、3年で23%、5年で29%に達しました。
AKIを発症した患者は、発症しなかった患者に比べて死亡リスクが6.25倍と有意に高くなりました。
AKI発症に関連する因子として、アミノ酸インバランス、アルコール関連肝疾患、代謝異常関連脂肪性肝疾患が挙げられました。
アミノ酸インバランスがAKI発症に影響
肝硬変患者では、血中のアミノ酸濃度が変化し、アミノ酸インバランスが生じます。特に、分岐鎖アミノ酸(BCAA)が減少し、芳香族アミノ酸が増加します。研究グループは、アミノ酸インバランスの指標である総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR)に着目し、BTRが高い患者ほどAKIのリスクが高いことを明らかにしました。
肝硬変患者のAKI予防への期待
この研究成果は、肝硬変患者におけるAKIの予後に対する影響を明らかにし、AKIのリスク因子を特定した点で大きな意義があります。特に、アミノ酸インバランスがAKI発症に関連していることが示唆されたことから、BCAA製剤などの栄養療法によるアミノ酸バランスの改善が、AKIの予防に役立つ可能性が期待されます。
今後の展開
今後の研究では、AKIのリスク因子をより詳細に分析し、早期発見や予防のための新たな戦略を開発していく必要があります。また、栄養療法や生活習慣改善など、AKI発症を抑制するための効果的な介入方法を探索していくことが重要です。
研究の詳細
この研究成果は、2024年6月11日に国際的な学術雑誌「Journal of Gastroenterology」に掲載されました。
論文情報
雑誌名: Journal of Gastroenterology
論文タイトル: Acute kidney injury development is associated with mortality in Japanese patients with cirrhosis: impact of amino acid imbalance
著者: Miwa T, Utakata Y, Hanai T, Aiba M, Unome S, Imai K, Takai K, Shiraki M, Katsumura N, Shimizu M.
DOI: 10.1007/s00535-024-02126-7
研究者プロフィール
氏名: 三輪 貴生 (Miwa Takao)
機関: 東海国立大学機構 岐阜大学
所属・職名: 岐阜大学医学部附属病院第一内科・医員
三輪医師は、肝硬変患者のAKI発症に関する研究を精力的に行い、数々の賞を受賞しています。今回の研究成果は、肝硬変患者の健康寿命の伸長に貢献する重要な発見です。