がん免疫療法の新展開
2022-05-16 13:36:25
がん免疫療法の新たな方向性:血液中アミノ酸プロファイルの可能性
がん免疫療法の新たな方向性:血液中アミノ酸プロファイルの可能性
近年、がん治療において免疫療法の重要性が増してきている中、特に注目を集めているのが免疫チェックポイント阻害薬です。これらの薬剤は、がん細胞に対する免疫機能を高める役割を果たしますが、すべての患者に対して同じように効果があるわけではありません。そのため、どの患者に対して免疫療法が有効かを特定する方法が求められてきました。このたび、神奈川県立がんセンター、久留米大学、味の素株式会社の共同研究により、血液中のアミノ酸プロファイルを調査することで、がん免疫療法の効果的な患者選別ができることが明らかになりました。
研究の背景
免疫チェックポイント阻害薬は、抗PD-1/PD-L1抗体として知られ、がん治療の新たな選択肢として広く使われています。しかし、治療の効果は患者により異なり、重篤な副作用が発生することもあるため、効果的な患者を選別する“個別化免疫治療”の必要性が高まっています。この研究では、血液中のアミノ酸の組成を解析するために、治療前のアミノ酸プロファイルに着目しました。
研究成果
1. 血中アミノ酸・代謝物の測定結果
進行・再発非小細胞肺がん患者53例を対象に、治療前の血中アミノ酸濃度を質量分析法で測定したところ、アルギニン、セリン、グリシン、キノリン酸の4つのアミノ酸の組み合わせによって効果の高い患者を高精度に選別できることが示されました。
2. 免疫関連遺伝子との相関
血液中の免疫細胞でも調査が行われ、高い治療効果を示す患者群ではCD8陽性T細胞やM1型マクロファージの頻度が増加していました。また、これらのアミノ酸濃度とT細胞関連の遺伝子発現との間にも有意な相関が認められました。
3. アミノ酸代謝関連遺伝子の発現
アミノ酸代謝に関与する遺伝子の発現も調査され、有効群と無効群の間での発現差が確認されました。これにより、特定のアミノ酸代謝関連遺伝子が免疫療法の効果と関連している可能性が示唆されました。
研究の意義
この研究の成果は、血液中のアミノ酸プロファイル解析が、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するための新たなバイオマーカーとして臨床において有用であることを示しています。がん患者が必要のない治療を避け、より効果的な治療を受けることができる新しい戦略が期待されます。これにより、個別化がん免疫治療がより実現し、治療成績が向上することが見込まれます。
結論
この研究は、がん免疫療法の領域において新たな視点を提供しており、今後のがん治療における重要なステップとなるでしょう。血液中のアミノ酸プロファイルによる患者選別が臨床において実用化されることに期待が寄せられています。
会社情報
- 会社名
-
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター
- 住所
- 神奈川県横浜市旭区中尾二丁目3番2号
- 電話番号
-
045-520-2222