株式会社インフォマート(東京都港区)が、東京大学大学院工学系研究科の早矢仕研究室との共同研究により、合成データ生成技術に関する論文が「第6回とめ研究所若手研究者懸賞論文」で最優秀賞を受賞しました。この受賞は、11月8日に行われた授賞式で発表され、知識グラフと大規模言語モデル(LLM)、説明可能なフィードバックを融合させたKGSynXという手法が評価の対象となりました。
受賞の背景
本賞は、株式会社とめ研究所が主催し、一般社団法人情報処理学会などの後援によって行われました。受賞論文は「KGSynX: 知識グラフと説明可能なフィードバックによるLLMの合成表形式データ生成」と題され、東京大学の兪 科氏、早矢仕 晃章氏、インフォマートの石倉 茂氏、臼倉 由香利氏、至極 有輝氏が共著者となっています。
研究の内容とその意義
KGSynXは、従来の合成データ生成において見られた統計的類似性の欠如を克服することを目指しています。具体的には、意味的・構造的な制約を加えることでよりリアルな実データ特性を再現することができるのです。この技術を用いることで、合成データにおけるプライバシー保護とデータ活用の高度化が図られ、AI用の学習データの生成にも新たな道が開かれます。受賞理由には、この研究が人間と機械の共存を見据えた実用性も含まれており、今後のデータエコシステムにおける重要性は計り知れません。
インフォマートの貢献
インフォマートは、2024年から東京大学とのAIを用いた共同研究を開始しています。研究にあたっては、同社が運営する「BtoBプラットフォーム」での年間60兆円を超える商取引データを匿名化し、KGSynXの開発と検証に役立てています。これは、実データを基にした合成データ生成技術において非常に有意義な貢献といえるでしょう。
未来への展望
この共同研究を通じて、インフォマートは今後もデータ分析を進め、より高いレベルのAI活用を目指します。そして、東京大学との連携を深めることで、社会への貢献を一層強化していく意向です。
産学連携の意義
受賞に関して、兪 科氏は「生成AIと知識グラフを融合させた合成データ生成手法を提案できたことを嬉しく思います。安全かつ有用なデータの利活用を社会に提供したいという思いから、この研究が生まれました」とコメントしています。また、早矢仕氏も「この成果はインフォマートの支援と学生の探究心によるものであり、透明性と信頼性に基づくデータ社会の実現に向けて貢献したい」と述べています。
インフォマートの活動
インフォマートは1998年に設立され、企業間取引における業務の効率化を推進するクラウドサービスを提供しています。主力サービスの「BtoBプラットフォーム」は、120万社以上が利用し、年間62兆円以上の流通が行われているのです。今後、同社は高度なAI技術を駆使し、データの価値を最大限に引き出していくでしょう。