「アザラシのアニュー」作者・あずみ虫さんインタビュー:命のサイクルと地球温暖化、たくましい生き様を伝える絵本
株式会社童心社から出版された絵本『アザラシのアニュー』が、本年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校低学年の部)に選ばれました。この作品は、生まれて間もなく母親と別れ、厳しい環境の中でたくましく生きていく赤ちゃんアザラシの姿を描いています。
作者のあずみ虫さんは、アラスカに滞在しながら野生動物をテーマにした作品を制作しています。今回は、あずみ虫さんに『アザラシのアニュー』に込めた思いや制作秘話を伺いました。
生まれたてのアザラシがたくましく成長していく姿を描く
――『アザラシのアニュー』を制作するきっかけを教えてください。
「タテゴトアザラシの赤ちゃんのかわいらしい姿に魅了されました。そして、生まれてわずか2週間で母親と別れるという生態を知って衝撃を受けました。この事実を軸に、絵本を作ってみようと思ったのです。
実際に母親と赤ちゃんが別れ際に鳴き合う映像を見たのですが、赤ちゃんが母親に向かって何度も鳴く姿に胸が痛みました。そこから、たくましく成長していく姿まで含めて、親離れしていくアザラシの姿を描きたいと思いました。
前作『ホッキョクグマのプック』では、2年間の子育てをするホッキョクグマの親子の愛情を描きました。今回は、そこから一歩進んで、子どもが成長していく過程を描いた作品です。」
――アニューの気持ちを表現する上で工夫した点はありますか?
「アニューの目の表情ですね。母親と一緒にいるときは、安心しきった喜びを、独り立ちした後はたくましい気持ちを見せるように、目で表現しました。
例えば、水に入るのが怖くて泣いている場面では、その不安や葛藤が伝わってくるように、アニューの表情を丁寧に描きました。また、勇気を振り絞って泳ぎ出す場面では、たくましさや決意を感じられる表情を意識しました。」
地球温暖化が進む北極圏で生き抜く動物たちの姿
――作品を通して、子どもたちにどんなことを感じてほしいですか?
「アニューが様々な困難を乗り越えて成長していく姿を通して、子どもたちが自分自身の成長や挑戦にも繋がるようなメッセージを感じ取ってもらえたら嬉しいです。
また、地球温暖化によって変化している北極圏の環境問題についても、作品の中でさりげなく触れています。アザラシやホッキョクグマなど、北極圏に生息する動物たちの暮らしが、温暖化の影響を受けていることを知ってほしいと思っています。」
――今後の作品について教えてください。
「シリーズ3作目は、カリブー(トナカイ)を主人公にした作品を構想しています。温暖化によって、カリブーの生活環境が大きく変化していることを物語の中で表現したいと考えています。
これからも、野生動物たちの生き様や自然環境について、絵本を通して伝えていきたいです。」
作品を通して、命のサイクルと地球温暖化を考える
『アザラシのアニュー』は、厳しい環境の中で懸命に生きるアザラシの姿を通して、命のサイクルや地球温暖化について考えるきっかけを与えてくれる作品です。あずみ虫さんのインタビューからは、作品に込めた熱い思いが伝わってきました。
この絵本を通して、子どもたちはアザラシの生き様から勇気と感動を受け、自然環境への関心を深めることができるでしょう。