成蹊大学大学院理工学研究科の三浦正志教授らの研究グループが、世界最高レベルの臨界電流密度を有する鉄系超伝導薄膜を開発した。この成果は、英国科学誌Nature姉妹論文誌「Nature Materials」に掲載された。
三浦教授らは、独自の材料設計指針により、鉄系超伝導材料SmFeAsO1-xHx薄膜を創製。液体ヘリウム沸点温度(マイナス269度)下において、鉄系超伝導材料で世界最高の臨界電流密度を達成した。この特性は、すべての超伝導材料の中で最も高い臨界電流密度を誇る銅酸化物高温超伝導材料YBa2Cu3Oy薄膜に匹敵するレベルである。
この新しい材料設計指針は、SmFeAsO1-xHxだけでなく、他の超伝導材料(YBa2Cu3Oy,BaFe2(As1−xPx)2 , FeSe1-xTex)においても臨界電流密度を大幅に向上させることに成功した。今後、様々な超伝導材料の性能向上に貢献すると期待されている。
本研究は、科学技術振興機構(JST)の創発的研究支援事業の一環として行われた。三浦教授は、「対破壊電流密度に挑む」という研究テーマのもと、臨界電流密度を理論限界値に近づけることを目指している。
今回の成果は、大型ハドロン衝突型加速器、核融合発電、核磁気共鳴装置、磁気共鳴断層撮影装置、リニアモーターカーなどの分野への応用が期待される。また、液体水素を冷媒とする超伝導送電、超伝導電力貯蔵装置、航空機用超伝導モーター、発電機などへの応用も視野に入れている。
三浦教授は、今回の研究成果について、「従来の材料設計指針では達成できなかった世界最高レベルの臨界電流密度を達成することができた。この成果は、超伝導技術のさらなる発展に大きく貢献すると期待しています。」とコメントしている。