武蔵野美術大学での特別展「別の山に登る」
2025年の秋、武蔵野美術大学美術館・図書館にて特別展「別の山に登る」が開催される。この展覧会は、同大学の造形学部で長年教授を務めた赤塚祐二の教授退任を記念したものだ。
赤塚は1980年代後半から本格的な絵画制作に取り組んできたアーティストであり、「もの派」以降の抽象絵画の世界で重要な役割を果たしてきた。展覧会では、初期の作品から最新作までを網羅した35点の油彩画に加え、版画やドローイングなど様々な形式の作品を通じて、赤塚の長い芸術の旅路を振り返ることができる。
展覧会の概要
展覧会の会期は2025年9月8日から10月26日まで。期間中の開館時間は11:00から19:00まで、土日祝日は10:00から17:00までとなっている。水曜日は休館日であり、入館は無料であるため、誰でも気軽に訪れることができる。また、会場は美術館の展示室3及びアトリウム2で行われ、主催は武蔵野美術大学美術館・図書館である。
この道中、作品群には代表的な〈hana〉や〈canary〉シリーズ、さらには新作の〈another mountain〉や〈suspense〉シリーズも展示される予定である。特に注目すべきは、2006年から2013年にかけて発表された〈another mountain〉シリーズの作品であり、これには故郷である鹿児島県の高千穂峰や桜島を彷彿とさせる山の形が描かれ、赤塚の発想の根源に触れることができるだろう。
赤塚のアート制作への思い
赤塚は自身の制作プロセスについて「山登りに例えるならば、作品が完成する喜びは目指す山頂に到達する喜びだ。しかし、登ろうとした山とは違う別の山に登ってしまうことも多々ある」と語る。この言葉には、創作過程における偶然性や、意図と結果の不一致を受け入れる姿勢が反映されている。彼の作る作品は、意図せずに表れた形の偶発性を大切にし、そこから紐解かれる発想の幅広さを示している。
赤塚の絵画表現は、広範な色彩と独特のテクスチャーによって、多面的な視点を提供する。彼の作品は、見る者に感情を喚起し、さまざまな想像を掻き立てる力を持っている。そして彼の言葉が示すとおり、アートは時に意図しない方向へ進むことで、より豊かな表現を生み出す可能性がある。
アートの未来に向けて
本展覧会は、赤塚の独自の画家としての道と、そこでの葛藤を辿る貴重な機会となる。彼が提唱する「別の山に登る」という考えは、アートの無限の可能性を感じさせてくれる。展覧会の開催を機に、アートに対する新たな視点を得ることができるだろう。更に、対談イベントも計画されており、彼の深い洞察を聞くことができる機会も設けられている。
展覧会開催にあたり、赤塚の作品から得られる感動を通じて、訪れる人々がそれぞれの「山」を探す旅に出ることを期待したい。特別な時間を過ごしながら、彼のアートの奥深さに触れてみてはいかがだろうか。