新たな治療薬候補JR-479の開発契約
2023年、メディパルホールディングス株式会社(以下「メディパル」)とJCRファーマ株式会社(以下「JCR」)は、GM2ガングリオシドーシスに対する治療薬候補JR-479の開発に関する重要な契約を締結しました。これは特に超希少疾患への新たな医療ソリューションを提供することを目指すもので、メディパルはJR-479の海外における事業化において独占的な権利を取得しました。
GM2ガングリオシドーシスとは?
GM2ガングリオシドーシスは、ライソゾーム病の一種で、遺伝子の変異によりGM2ガングリオシドの分解が妨げられ、主に神経細胞にこの物質が蓄積することが特徴です。主な分類にはテイ・サックス病やサンドホフ病があります。この疾患の罹患率は非常に低く、約30万人に1人と推定されていますが、現在、世界中で承認された治療法は存在しません。したがって、JR-479の開発は重大な意味を持っています。
JR-479とその技術
JR-479は、2021年に承認されたイズカーゴ®を基にした新薬候補であり、J-Brain Cargo®技術を利用して中枢神経系に効率的に届けられるよう設計されています。この技術は、脳毛細血管の内皮細胞表面に存在するトランスフェリン受容体を介しているため、特に神経系の疾患に対する療法に有効です。非臨床試験では、JR-479が静脈内投与により全身に分布し、本疾患の原因となる物質を減少させる効果が示され、その結果、延命効果も確認されています。
共同開発における役割
今回の契約により、メディパルは日本を除く全世界においてJR-479の臨床開発、製造、販売に関する独占的権利を獲得します。一方、JCRは日本での事業展開とともに、販売収益に応じたロイヤリティを受け取る契約内容となっています。また、メディパルはJR-479を日本での臨床開発において支援し、治験薬の配送や疾患啓発、臨床試験の実施に関与することになります。
この契約は、2022年10月から両社で進めてきた超希少疾病用医薬品の開発に、新たにJR-479が加わる形であり、これまでにフコシドーシスやムコ多糖症IIIB型に関する治療薬開発を進めています。医薬品開発が進む中、両社は様々な超希少疾患に対する治療薬の実現に向けて、連携を強化している姿勢が見て取れます。
将来への期待
本件に関する影響は、両社の2026年3月期の連結業績に織り込まれています。GM2ガングリオシドーシスという超希少疾患に対する新たな治療薬の開発は、患者やその家族にとって希望の光となるでしょう。JR-479が成功裏に開発されることで、これまで治療方法がなかったこの病に、新たな治療選択肢が提供されることを期待しています。今後の進展にも注目が集まります。