本願寺改革の未来
2022-10-18 09:31:32

選ばれる本願寺へ:新執行長が語る改革と未来戦略

選ばれる本願寺へ:新執行長が語る改革と未来戦略



2023年8月、浄土真宗本願寺派は新たな執行長として安永雄彦氏を迎えました。安永氏は銀行員、経営コンサルタントを経て僧侶となり、築地本願寺で手腕を発揮した経歴を持つ人物です。記者会見で語られた改革ビジョンは、現代社会における寺院のあり方を問うものでした。

築地本願寺の成功事例:現代社会に合わせた寺院運営



安永氏は、以前務めていた築地本願寺での改革を詳細に説明しました。2015年当時、築地本願寺では深刻な「寺離れ」が問題となっていました。そこで、安永氏は「誰でも入りやすい、入りたくなるお寺」を目指し、様々な施策を展開しました。

まず、境内地下に誰でも利用できる「合同墓」を建設。生前契約制で、宗派や継承の有無を問わず利用できる点が好評を博し、多くの申し込みがありました。さらに、会員組織「築地本願寺倶楽部」を設立し、終活サポートや仏教講座を提供。2020年には結婚相談サービス「築地の寺婚」も開始し、人生全般をサポートする体制を整えました。

また、プロントコーポレーションと連携してカフェをオープン。築地場外市場から仕入れた食材を使った朝食メニューは話題を呼び、若い女性層の参拝者増加にも繋がりました。新型コロナウイルス感染症の流行時には、いち早くオンライン法要を導入するなど、時代の変化に対応した柔軟な対応も評価されています。これらの取り組みの結果、築地本願寺の年間参拝者数は5年で2倍に増加しました。

本願寺の課題と未来戦略:門徒創造のためのイノベーション



築地本願寺の成功を踏まえ、安永氏は本願寺の抱える課題と未来戦略を提示しました。高齢化が進む門徒、地方寺院の存続問題、そして宗教離れという深刻な現状を打破するためには、「門徒創造のためのイノベーション」が不可欠であると主張します。

安永氏は、従来型の儀式中心のアプローチから脱却し、Webやクラウドなどを活用した新たな伝道布教を展開したい考えです。具体的には、本願寺における「国宝体験」などの企画やサービス改善を通して、京都・奈良の寺院の中でも選ばれる存在を目指します。

また、内部改革にも着手します。CRMシステム導入、IT化推進、情報発信の強化、財政の見直しなど、多くの課題に取り組む必要性を強調。ただし、独断専行ではなく、職員と共に考え、2年間でお寺の体質を変えていく方針です。

「経営」という視点:寺院運営における新しい考え方



安永氏は、「お寺に経営という概念は相いれない」という意見もあることを認めつつ、実は「経営」という考え方は仏教用語から生まれたものであり、仏教に馴染み深い概念であると説明しました。自身の銀行や経営コンサルタントでの経験が、今回の執行長就任に繋がったと考えています。

未来への展望:リアルとバーチャルを融合した発信



今後の目標として、リアルとバーチャル両面から浄土真宗の教えに触れられる機会を増やし、本願寺への関心を高めることを掲げています。2023年に行われた「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」も、社会への発信の好機と捉え、改善を積極的に検討していくとしています。

安永氏は、本願寺が「人を選ぶ」のではなく「選ばれるお寺」になることを目指し、改革を進めていくことを強調しました。その取り組みは、現代社会における寺院の在り方、そして宗教の役割を問う重要な試金石となるでしょう。

会社情報

会社名
宗教法人 本願寺
住所
京都府京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町
電話番号
075-371-5181

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