有機体ブロックの新しい挑戦
最近、海藻や付着生物が定着しやすい性質を持つ「有機体ブロック」が発表されました。これは、株式会社環境内水面資源研究所(山形県鶴岡市)が開発した再生資源を用いた環境配慮型の人工構造材です。このブロックは、沿岸域における藻場再生や生物多様性回復に寄与することを目的としています。特に、磯焼けによって減少している海藻の生育場所を取り戻すための画期的なソリューションとして注目されています。
実証実験が始まった背景
海洋環境において、近年、磯焼けの影響により藻場が激減しています。その影響で、稚魚や貝類などの生物が育つ環境が失われつつあり、これが結果として水産資源の減少や地域漁業の衰退を招いています。さらに、海藻による炭素吸収能力(ブルーカーボン)の低下も見過ごせません。
このような課題を受けて、環境内水面資源研究所では、海藻や貝類の生育特性に基づき、「有機体ブロック」を開発しました。このブロックは、地域の未利用素材や再生資源を使い、自然に調和した設計です。
有機体ブロックの設計と特長
「有機体ブロック」は、食品残渣や腐葉土、石材などの再生資源を活用し、微生物や海藻が定着しやすい形状や質感を意識して設計されています。このブロックは、セメントをほとんど使わず、pHバランスにも優れており、海水中でも自然に分解され砂や栄養塩として還元されていきます。特筆すべきは、その表面に微細な凹凸を設けることで、初期付着生物が定着しやすくなり、海藻類の胞子が集まりやすい環境が整えられる点です。
株式会社石坂産業との共同実証
2023年3月から、山形県酒田港北港にて、有機体ブロックの実証実験が開始されました。石坂産業株式会社と共同で進められ、これにより海藻や魚類、稚貝の生育が促進されることを期待しています。また、実験は697日(2025年3月)まで続き、様々な状況におけるブロックの効果を確認していく予定です。
環境への影響と持続可能性
「有機体ブロック」は、使用から約3〜5年以内に設計通りに分解し、環境中に自然と還元されます。これは、人工構造物が役割を終えた後も、自然に帰ることを目的とした設計です。これにより、海洋環境と調和しつつ、長期的には生態系の再生にも寄与します。
期待される成果と展望
実証実験の成果として、海藻が定着しやすい環境が確立されることが期待されています。特に酒田地区では、アカモクの藻場形成により、海洋生物の産卵場所が確保されることが予測されています。その結果、地域漁業の活性化や持続可能な環境構築に寄与する可能性が高いです。
今後、この技術は藻場造成や牡蠣養殖など、多様な海洋環境での応用が計画されています。具体的には、より複雑な生態系構築や海外市場への展開も視野に入れ、持続可能な海洋環境の形成に貢献していく考えです。
まとめ
「有機体ブロック」は、藻場の再生や生物多様性の回復、地域漁業の活性化を目指した新しい取り組みです。今後の実証実験を通じて、海洋生態系の持続可能性を確保するための重要なツールとして成長していくことが期待されます。