2024年度の人手不足倒産が過去最多の350件に達す
2024年度における人手不足倒産が過去最多の350件に達し、前年度の313件を上回るという厳しい結果となりました。特に建設業が111件と高い数字を示し、業界全体の約3割を占めています。これは、人員確保や賃金面の厳しさが影響合っていると考えられます。
業種別の影響と背景
調査を行った株式会社帝国データバンクによれば、従業員の離職や新たな人材の採用難が主な原因として挙げられています。建設業は過去においても深刻な人手不足に直面しており、特に2024年4月から施行された時間外労働の新規制、いわゆる「2024年問題」がその影響を決定づけています。また、物流業も42件と多く、依然として高い水準であることがわかります。
業種ごとの倒産件数は以下の通りです。
- - 建設業: 111件 (前年度比 +17件)
- - 物流業: 42件 (前年 -4件)
これらのデータは、業界の構造的な問題が不断に影響を与えていることを示しています。人材不足の状態は、賃金上昇の圧力を生むにもかかわらず、適正な価格転嫁が進まないことでさらに悪化しています。
賃上げの流れとその課題
最近では、大企業が若手人材の採用を強化しているため、「初任給30万円時代」とも称されています。政府は最低賃金の引き上げも表明しており、こうした環境から賃上げの機運は高まっています。しかしその反面、小規模事業者には賃上げ余力が無いという現実が存在します。
特に小規模事業者においては、「賃上げ難型」の人手不足倒産が続くと予想され、ますます厳しい経営環境が予想されます。人材の確保と定着に必須な賃上げの原資を捻出するためには、適切な価格転嫁が必要です。受注競争が激しい中にあって、価格転嫁は困難を極めており、建設業の価格転嫁率は39.6%にとどまっています。
価格転嫁の大変さとその先
実際、全業種の平均価格転嫁率が40.6%に達する中、建設業ではその数値が下回っています。特に賃金向上を目的とする価格転嫁が取引先によって受け入れられにくいという声も、現場からは上がっています。これらの状況から、価格転嫁が賃上げへ結びつくかどうかが注視される問題です。今後の人手不足倒産の動向において、価格転嫁がカギとなることでしょう。
今後、業界全体が賃金引き上げに賭ける中で、果たして小規模事業者は踏みとどまることができるかが注目されます。高まる人員獲得競争が引き起こすこの危機の行く末に、私たちは目を光らせる必要があります。