2025年IPO市場の動向
2025-08-12 13:10:34
2025年IPO市場:中華圏の回復と米国の活況が印象的
2025年の上半期における世界の新規株式公開(IPO)市場は、高いボラティリティにもかかわらず、驚くべき回復力を示しました。EYによる調査によれば、539のIPOが614億米ドルを調達し、前年同期比で調達額は17%増加しました。この結果は、多くの企業が準備を整え、変動する資本市場に適応する能力を持っていることを示しています。特に、中華圏が主要なプレーヤーとして浮上し、全体の調達額の約3分の1を占めています。対して、欧州はわずか10%にとどまりました。
米国は、この期間に109件のIPOを実施し、2021年以来の好調なパフォーマンスを記録しました。つまり、現在の市場環境において、企業は上場を再考するタイミングに立たされているのです。多くは上場を先延ばしにしたり、あるいは規模を縮小して上場を計画したりしています。一方、クロスボーダー上場の件数は過去最高に達し、全体の14%を占めました。
EYのグローバルIPOリーダーであるジョージ・チャン氏は、「地域やセクターを超えたIPO市場の再構築は、世界の資本フローや投資家の心理の大きな変化を反映している」と述べています。企業は、短期的なボラティリティを乗り越えるために、IPO戦略を長期的なトレンドに合致させることが必要です。
地理的な動向としては、特に米国と中華圏、そしてシンガポールが企業の主要なIPO拠点となっています。特筆すべきは香港で、過去の数年にわたる低迷を経て、調達額が前年同期比7倍となり、再び世界のトップに戻りました。これに対し、欧州は市場混乱の影響を受けつつも、スウェーデンでのメガIPOが市場を活性化させる役割を果たしました。
また、複雑なセクター別の状況も重要な要因です。地政学的な影響が各セクターに与える影響が目立ち、特に製造業やエネルギー関連、ライフサイエンスセクターでは新たな上場機会が生まれています。製造業においてはモビリティ関連のIPOが成長を遂げており、エネルギーセクターでは防衛関連のIPOが増加しています。テクノロジーセクターは依然としてIPO市場の中心に位置し、米国と日本がソフトウェア関連でリードしています。中華圏はハードウェア関連のIPOで貢献し、デジタル資産やフィンテックの動向も見逃せません。
2025年の下半期に向けては、引き続き慎重ながらも前向きな見通しが立てられています。IPO市場が安定するためには、協調的な貿易体制や金融緩和政策の実施が欠かせません。また、各国の戦略的優先事項がIPOに影響を及ぼす中で、現実的な評価と柔軟なタイミングでの上場を目指す企業が成功しやすい環境が整うでしょう。
日本においては、2025年上半期のIPO件数は前年同期の38社から28社に減少し、特に成長市場での低迷が影響しています。EYの善方正義氏は、「日本のIPO市場では市場の戻りには時間がかかる」とコメントしましたが、プライム市場に関しては大型IPOの期待が高まっていると述べています。
このように、2025年の世界と日本のIPO市場は、変動する経済環境や企業の戦略に大きく影響されながら進化を続けています。本レポートを通じて、これからの動向に対する理解を深めていきましょう。
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