3Dプリンターがもたらす義手の進化
広島国際大学において、革新的な取り組みが進められています。それは、成長期の障害者アスリートが使用する義手を、3Dプリンターを活用して安価に製作するというプロジェクトです。この取り組みの中心となるのは、リハビリテーション学科義肢装具学専攻の森永浩介講師です。彼は、成長に伴う体形の変化に柔軟に対応できる義手の製作を目指しています。具体的には、義手のソケット部分を気軽に作り替えられるようにすることです。
アスリートが直面する課題
義手や義足は、使用者の体にフィットするように専門の義肢装具士が製作します。そのため、費用は高額になり、約35万円が必要となります。特に子供の場合、成長に伴い何度も新調が求められるため、親には経済的な負担が大きいのです。森永講師は、このような課題を解決するために3Dプリンターの導入を考えました。
植田百音さんの活躍
生まれつき左前腕に障害を持つ高校生アスリート、植田百音(もね)さんは、幼少期から短距離走に情熱を注いでいました。彼女は体を両手で支えることができないため、他の選手がクラウチングスタートを行う中、スタンディングスタートを余儀なくされ、スタート時に遅れをとっていました。そんな植田さんの悩みに気づいた森永講師は、彼女が収納できるソケットを成長に応じて製作することを決意しました。
記録更新の背景
植田さんは、自らの障害を乗り越え、短距離走に挑戦し続けています。2022年には全国障害者スポーツ大会で3位に入賞し、今年の広島県障害者陸上競技大会では大会新記録を打ち立てました。これも、森永講師が提供した3Dプリンターで製作した義手のおかげです。彼女の義手ソケットは製作費が約900円で済み、材料の再利用も可能。これにより、経済的負担が大幅に軽減されました。
未来を見据えて
森永講師は「10代は運動能力が大きく向上する時期であり、成長に合わせて安価に作り替えられる義手の必要性を広めていきたい」と話しています。彼の取り組みは、今後開催される「国際デジタルモデリングコンテスト2024」にも展示される予定で、さらに多くの人々にその価値を伝えることでしょう。
このように、広島国際大学の最新の義手製作技術は、障害を持つアスリートに新たな希望と可能性を提供しています。義手の製造の手間を削減し、成長に応じた支援を実現するこのプロジェクトは、未来のスポーツ界において大きな影響を与えることが期待されています。