新抗がん剤TBP1901の作用機序
2022-10-20 16:30:01

画期的な抗がん剤開発!水溶性プロドラッグ型クルクミンTBP1901の抗腫瘍効果と作用機序を解明

画期的な抗がん剤開発:水溶性プロドラッグ型クルクミンTBP1901



近年、がん治療の分野において大きな進歩が見られています。中でも注目を集めているのが、既存の治療法に抵抗性を持つがん細胞に対処できる新たな治療薬の開発です。この度、京都大学と株式会社セラバイオファーマの共同研究グループは、画期的な抗がん剤となる可能性を秘めた水溶性プロドラッグ型クルクミン(TBP1901)に関する研究成果を発表しました。

クルクミン:スパイスから抗がん剤へ



クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種で、古くから香辛料や着色料として利用されてきました。近年、様々な基礎研究において、クルクミンが様々な種類のがん細胞に対して抗腫瘍効果を持つことが示唆されており、抗がん剤としての開発が期待されてきました。しかし、クルクミンは経口摂取した場合、腸管での吸収率が低く、十分な血中濃度を得ることが困難でした。そのため、その抗がん作用を十分に発揮させることが課題となっていました。

TBP1901:吸収性の高い新たなクルクミン製剤



研究グループは、この課題を克服するため、クルクミンの吸収性を高める研究を長年続けました。その結果、クルクミンモノグルクロニド(CMG)をプロドラッグとして用いることで、高い吸収性を有する水溶性プロドラッグ型クルクミン(TBP1901)の開発に成功しました。TBP1901は、静脈投与することで、体内においてβ-グルクロニダーゼという酵素によってクルクミンに変換され、その抗腫瘍効果を発揮します。

多発性骨髄腫への有効性



研究グループは、ボルテゾミブという標準治療薬に抵抗性を持つ多発性骨髄腫のマウスモデルを用いて、TBP1901の抗腫瘍効果を検証しました。その結果、TBP1901は体重減少などの副作用を伴うことなく、顕著な抗腫瘍効果を示すことが確認されました。これは、TBP1901が既存の治療法に抵抗性を持つがん細胞に対しても効果を発揮する可能性を示唆するものです。

作用機序の解明:CRISPR-Cas9スクリーニング



TBP1901の作用機序を解明するため、研究グループはCRISPR-Cas9スクリーニングという最新のゲノム編集技術を用いた解析を行いました。その結果、クルクミンはNF-κB経路や活性酸素種(ROS)産生に関与する遺伝子を標的とすることで、抗腫瘍効果を発揮している可能性が高いことが示されました。これは、クルクミンが複数の作用機序を介して抗がん作用を示すマルチターゲット型の薬剤であることを示唆しています。

今後の展望



今回の研究成果は、TBP1901が安全で効果的な新たな抗がん剤となる可能性を示唆しています。今後、更なる研究を通じて、TBP1901の臨床応用に向けた開発が進められることが期待されます。特に、骨髄で増殖するがん種への臨床応用が期待されます。クルクミンは、食品にも含まれる天然化合物であり、安全性が高いという点も大きなメリットです。

研究概要



研究機関: 京都大学医学研究科、京都大学大学院薬学研究科、株式会社セラバイオファーマ
発表論文: European Journal of Pharmacology
* 主要研究者: 金井雅史准教授、白川康太郎助教、掛谷秀昭教授

この研究は、既存のがん治療薬に抵抗性を持つがん細胞に対する新たな治療戦略の開発に大きく貢献する可能性があり、今後の展開に大きな期待が寄せられています。

会社情報

会社名
株式会社セラバイオファーマ
住所
神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1KSPイノベーションセンター東604
電話番号
044-322-0005

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