唾液検査で変わる糖尿病管理:採血不要の画期的な技術
近年、増加の一途を辿る糖尿病患者にとって、血糖値の正確なモニタリングは不可欠です。しかし、従来の血糖値測定には、採血を伴う煩わしさや痛み、そして定期的な通院が必要でした。この現状を変える可能性を秘めた画期的な研究成果が、東京大学、熊本大学、そして東大発のスタートアップ企業である株式会社Provigateの共同研究によって発表されました。
この研究で実証されたのは、
唾液を用いた完全非侵襲の血糖モニタリング法です。従来の血液検査と同等の精度で血糖値を測定できるこの技術は、糖尿病患者にとって朗報と言えるでしょう。
唾液グリコアルブミンに着目
研究グループは、血液中の糖化アルブミン(GA)に着目しました。GAは、血液中のグルコース(血糖)と結合したアルブミンで、直近1~2週間の平均血糖値を反映します。従来、GA値の測定には採血が必要でしたが、今回の研究では、唾液中のGAを分析することで、採血をせずにGA値を測定できることを明らかにしました。
高い精度と簡便性
研究では、1型および2型糖尿病患者56名を対象に、入院中の採血と唾液のサンプルを採取し、GA値を比較しました。その結果、唾液と血液で測定したGA値は高い相関を示し、唾液検査が血液検査と同等の精度を持つことを確認しました。この方法は、患者にとって負担の少ない、簡便な検査法と言えます。
今後の展望:在宅での血糖管理へ
研究グループは、今後、この唾液検査法を、既に開発済みの郵送検査システムと組み合わせることで、在宅での週1回の血糖モニタリングの実現を目指しています。これにより、通院の負担を軽減し、より柔軟で継続的な血糖管理が可能になることが期待されます。
既存の血糖測定法の課題
従来の血糖測定法であるHbA1c測定や自己血糖測定(SMBG)、持続血糖モニタリング(CGM)は、それぞれに課題がありました。HbA1cは長期的な血糖管理には有効ですが、短期的な変化には対応できません。SMBGは簡便ですが、頻回の測定が必要で負担が大きいです。CGMは連続的な測定が可能ですが、センサの装着やコストが課題です。
唾液検査のメリット
対照的に、唾液検査は、採血が不要で、簡便かつ低侵襲であるため、患者にとって大きなメリットがあります。また、自宅で簡単に検査できるようになれば、通院の回数を減らし、生活の質を向上させることに繋がります。
株式会社Provigateの役割
株式会社Provigateは、東京大学発の医工連携スタートアップ企業として、この研究開発の中核を担ってきました。同社は、医療技術の開発と社会実装に力を注いでおり、今回の成果は、その取り組みの大きな成果の一つと言えるでしょう。
まとめ
唾液を用いた非侵襲的な血糖モニタリング法は、糖尿病患者の生活の質を向上させる可能性を秘めた画期的な技術です。この技術の更なる発展と普及によって、より多くの人々が、負担の少ない方法で血糖管理を行い、健康な生活を送れるようになることが期待されます。今後の研究の進展に注目が集まります。