Laboro.AIと気象庁が実現した竜巻検出技術の進化
株式会社Laboro.AI(東京都中央区)は、気象庁気象研究所と共同で、深層学習を利用した竜巻検出技術の高度化に成功しました。その結果、従来の精度を上回る成果を獲得し、業界内で注目を浴びています。この研究は、「AI技術を活用した気象レーダーによる顕著現象の検出と情報処理の高度化に関する研究開発」の一部として位置付けられています。
研究開発の背景と目的
過去の気象データをもとに、気象研究所では竜巻のパターンを把握し、自動的に検出・追跡できる技術の開発を進めていますが、特異な条件下での検出精度は課題とされていました。そこでLaboro.AIは、既存の深層学習モデルに加え、さらなるモデルの開発と比較評価を行い、竜巻の識別精度を向上させることを目指しました。
実施概要
研究では、2010年から2019年までの9つの空港で取得した過去データから合計13,000件の学習データを収集し、これを基に現在使用されているVGGモデルの再学習を行いました。また、以下の三つの新たなAIモデルも開発しました:
1.
MobileNetV3:計算量とモデルサイズを削減しつつ、精度を維持するCNNモデル。
2.
EfficientNetV2:ネットワークの効率的なスケールアップを目的としたNASモデル。
3.
SwinTransformerV2:長距離依存を捉えるための自己注意機構を採用したViTモデル。
性能評価
新たに開発した三モデルは、従来のVGGモデルと比較して高い識別能力を示しました。特に、EfficientNetV2とSwinTransformerV2は、適合率-再現率曲線の下面積(AP)において優れた結果を記録し、竜巻渦の正しい識別においてより効果的であることが確認されました。
推論時間の分析
新モデルの推論時間をCPUとGPUで比較した結果、特にMobileNetV3モデルは、エッジデバイスやモバイルプラットフォームにおける効率的な推論性能を示しました。これにより、広範囲のデバイスにおける竜巻検出システムの展開が可能となることが期待されます。
論文への採択と受賞
これらの研究成果をまとめた論文が公益社団法人 土木学会に採択され、来たる2024年に「AI・データサイエンス論文賞」を受賞することになりました。この論文は、AIを用いた竜巻検出技術が今後もさまざまな分野での適用と実装が見込まれることを示唆しています。
今後の展望
Laboro.AIは、将来的には鉄道や高速道路、さらに電力会社などのライフラインサービスの分野で、リアルタイムでの災害予防情報の提供に寄与できることを期待しています。同社はこれからも気象庁気象研究所と連携し、多様なサービスにおけるAI技術の普及に力を入れていく意向です。
この研究の進展により、社会基盤を支える新たな技術の展開が一層加速することが期待されます。