デジタルID経済圏構築に向けたアジア太平洋コンソーシアム設立
大日本印刷株式会社(DNP)は、2024年10月18日にアジア太平洋地域におけるデジタルアイデンティティ(ID)に関する企業と手を組み、「Asia Pacific Digital Identity Consortium(APDI)」の設立に向けた基本合意を成立させました。このコンソーシアムは、個人の属性や学歴、資格、職歴などのデジタルIDを安全かつ安心に流通させることを目指しています。
APDI設立の背景
この動きは、生成AI技術の急速な発展や国際交流の増加が引き起こしたプライバシーリスクへの対応策の一環です。データの改ざん、漏洩、なりすましといった問題は、今や多くの国で重大な課題となっており、特にアジア太平洋地域でも信頼性の高いデジタルIDが必要とされています。しかし、この地域特有の文化や言語の違い、またインフラの未整備が壁となり、各国で異なるシステムが存在しているのも現実です。
DNPは、こうした課題に対処するために、各国のデジタルID関連のソリューションを統合し、地域全体で相互運用可能な信頼のネットワークを構築することを目指しています。これにより、安全で効率的なデータ流通の基盤が整備され、地域のニーズに応じた対応が可能となるでしょう。
APDIの主な目的
コンソーシアムは、以下の目的を掲げています。
1. ガバナンスの確立
政府、企業、個人間で利用可能なデジタルIDの技術や運営の要件を明確にし、相互運用を実現するためのルール作りを行います。これにより、信頼できるデジタルIDを利用した経済圏の構築を図ります。
2. ユースケースの創出
政府や民間企業、国際機関と連携し、アジア太平洋地域におけるデジタルID利用の実例を増やしていくことを目指します。APDI参加企業が主体となり、相互に技術を共有し、実用的な事例を生み出していくことが期待されています。
3. 利用促進のための施策
異なる国や地域、プラットフォーム間で活用できるデジタルIDを推進し、生活者の利便性を向上させます。これにより、観光や就業、教育といった場面での個人情報の確認が簡便になり、その利便性が格段に向上します。
今後の展開
APDI参加企業は、2025年下期を目指して実証実験を実施する計画です。その後、2026年以降にはデジタルIDに基づく経済圏の構築を具体的に進めていく考えです。
APDIには、DNPをはじめとする多くの企業が参画しています。また、各国の政府機関とも密接に連携を取りながら、デジタルIDに関するグローバルな基準づくりにも貢献する予定です。これまでの技術の進化を活かし、未来のデジタル社会における信頼の礎を築いていくことが期待されています。
参画企業一覧
- - 共同設立企業: 大日本印刷株式会社、Turing Space Inc.
- - 理事企業: ACCREDIFY Pte. Ltd.、LORDSYSTEM Co., Ltd.、ZADA Solutions Pte.
本コンソーシアムによりアジア太平洋地域におけるデジタルIDの利用が広がり、社会全体のデジタルインフラが強化されることが期待されます。