低分子コアセルベートの解析
2026-02-04 14:14:21

低分子コアセルベートの分子レベルでの構造解析が新たな可能性を提示

低分子コアセルベートの分子レベルでの構造解析が新たな可能性を提示



岐阜大学高等研究院の小百合特任助教とその研究グループが、低分子化合物からなるコアセルベートの内部構造を分子レベルで解明する重要な研究を発表しました。この研究は、刺激応答性を持つ新たな低分子コアセルベートを用い、それが生体機能材料や人工細胞構築の基盤となる可能性を示しています。

研究の背景



生物の細胞内では、液–液相分離によって形成されるコアセルベートという液滴状の区画が、重要な役割を果たしています。これまでは高分子からなる複雑な集合体が主な研究対象でしたが、近年では低分子化合物のコアセルベートに注目が集まっています。低分子は設計の自由度が高く、さまざまな応用が期待される一方で、化学構造の違いがどのようにコアセルベートに影響するのかはあまり理解されていませんでした。

研究内容



研究チームは、疎水性部位と親水性スペーサーを連結した3種類の低分子化合物を設計しました。これらの化合物が水中で形成するコアセルベートの構造や内部環境に及ぼす影響を詳細に解析しました。得られた結果は、各コアセルベートが直径数µmの球状構造体を形成し、含水率が約40–70%であることを示しています。特に、ステッカー構造の違いが内部環境や分子運動に大きく影響することが明らかになりました。水和状態や流動性は、Pmoc、cHex、NPmocという順で変化し、特にPmocコアセルベートは水和が進み流動性が高いことが確認されました。

還元応答性の実証



NPmocコアセルベートは、還元剤により短時間で崩壊し、内包した物質を放出することが示され、刺激応答性薬物キャリアとしての新たな応用可能性が示唆されています。さらに、蛍光プローブを用いた実験によって、コアセルベート内部の環境によって物質の取り込み挙動が異なることも確認されました。この結果、分子構造が内部環境に及ぼす影響を理解する手助けになります。

構造不均一性の明らかに



研究の過程で、全原子分子動力学シミュレーションが行われ、異なる疎水性部位の存在が局所的な疎水クラスターを形成していることが明らかとなりました。この発見は、コアセルベート内部や界面での構造の不均一性を示し、コアセルベートの設計に新たな知見を加えました。また、特定の構造がコアセルベート同士の融合や動的特性に影響を与え、機能性材料の設計において極めて重要な要素となります。

今後の展望



この研究により、分子構造の微細な違いが、コアセルベートの内部水和や粘性、構造的な不均一性に関わることが証明されました。今後、研究チームは化学構造の最適化を図り、酵素反応の促進や選択的分子濃縮、刺激応答放出の制御を実現することを目指します。さらに、複数の機能性区画を統合した「多階層人工細胞」の構築にもつながる可能性があります。

これらの研究成果は、低分子材料を基盤にした新しい人工細胞やソフトマテリアルの設計の可能性を大きく広げるものです。研究は2026年2月1日に学術雑誌「JACS Au」にて公開されました。


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