ローム、テラヘルツ波デバイスの新たな提供を開始
ローム株式会社が、共鳴トンネルダイオード(RTD)を使用した業界で最も小型なテラヘルツ波発振デバイス及び検出デバイスのサンプル提供を行うことを発表しました。この新しいデバイスは、サイズが0.5mm×0.5mmと非常にコンパクトでありながら、320GHzの周波数で最大20µWのテラヘルツ波を生成・検出する能力を持っています。
テラヘルツ波とは?
テラヘルツ波は、電波と光の間に位置する電磁波で、優れた透過性や直進性を持ち、非破壊検査や医療分野におけるイメージング、高速通信技術などに応用の可能性があると注目されています。
しかし、従来のテラヘルツ波発生装置は大規模で高価格であり、導入が難しいという課題がありました。
新しいデバイスの特長
ロームが新たに提供を始めるRTDデバイスは、その小型化、低消費電力化を実現した点で従来技術とは一線を画しています。出力時の消費電力はたったの10mWで、室温でも発振・検出が可能であるため、従来の装置で必要だった冷却機構が不要です。これにより、多くの企業や研究機関が手軽にテラヘルツ波の研究を行うことができるようになります。
さらに、テラヘルツ波発振デバイスと検出デバイスを対向させた場合、40dBのダイナミックレンジを持つ高い検出性能が得られます。何より、従来の発振装置と比べ、体積が1000分の1以下に抑えられており、限られたスペースにも適応することができます。
価格と提供について
このデバイスは2024年10月から、従来の装置の価格の10分の1、すなわち10万円(税抜)で提供される予定です。加えて、研究・開発を行うための評価キットも用意されますが、これらの購入には事前にロームとの機密保持契約が必要になります。
研究の期待
東京工業大学の鈴木左文教授は、ローム社との長年にわたる共同研究を通じて開発されたこのRTDデバイスの小型化と低コスト化は、民間企業や研究機関にとって非常に重要なステップであると述べています。テラヘルツ波の特性を活かした新しいアプリケーションの創発が期待されており、医療や通信、セキュリティ分野など様々な分野における研究開発が進むことでしょう。
今後の展望
ロームは、今後もテラヘルツ技術の産業化を目指し、国内外の大学や研究機関と協力しながらデバイスの開発を進めていく予定です。テラヘルツ波の実用化が進むことで、さまざまな分野での応用と新しい市場の創出が期待されます。
詳しくはロームのWebサイトや担当営業を通じて情報を得ることができます。