低コスト燃料電池触媒
2021-12-16 14:20:01
東北大学発スタートアップが低コスト高性能な燃料電池用触媒を開発
東北大学発スタートアップが切り開く新たなエネルギー技術
近年、エネルギー問題が深刻な課題となり、持続可能なエネルギー源の確保が求められています。そんな中、東北大学からスピンオフしたスタートアップ企業「AZUL Energy(アジュールエナジー)」が、低コストかつ高性能な燃料電池や空気電池用の新しい触媒を開発する成果を上げました。これにより、再生可能エネルギーの推進が加速することが期待されています。
研究の背景
燃料電池や金属空気電池において、電極触媒の性能は非常に重要です。特に、酸素還元反応(ORR)は、これらの電池の効率を左右するカギとなる反応ですが、自然には進みにくく、触媒を用いてその反応を促進する必要があります。現在広く使用されている白金触媒は高価で資源も限られており、また安価ながら性能が不十分なマンガン酸化物も、燃料電池や金属空気電池の高出力化には適していません。そのため、より安価で高性能な代替触媒の開発が急務とされています。
研究の内容と成果
AZUL Energyの研究グループは、まず青色顔料の一種である鉄アザフタロシアニンを用いた電極触媒の開発に着手しました。これは、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に担持することで、従来の白金触媒と同等以上の性能を引き出せることを発見しました。この触媒は、自然界に存在するヘモグロビンやシトクロムに似た構造を持ち、中心にある鉄原子が触媒活性を担っています。
その後、研究グループは、鉄以外にもニッケルや銅といった異なる金属を用いた触媒分子を合成し、これらを安価なカーボンブラックに担持することで、その性能を系統的に評価しました。結果、異性体を含む鉄アザフタロシアニンを使用した触媒が最も高性能であることが分かり、ニッケルや銅を用いると過酸化水素の生成が多くなることも確認しました。
さらなる実験では、紫外光電子分光(UPS)を用いて触媒分子のエネルギー状態を測定しました。ここから、触媒分子が炭素材料に担持された状態では、最適なORRに適したエネルギー状態に調整されていることが明らかとなりました。また、理論計算による性能の序列が実験と合致することも確認され、高活性触媒の実現に向けた有意義な結果が得られました。
この開発により、AZUL Energyが提案する新たな触媒技術は、白金やマンガン酸化物に代わるものとして、燃料電池や金属空気電池のコストを大幅に削減しつつ、高い性能を維持できる可能性を秘めています。
AZUL Energyについて
AZUL Energy株式会社は、2019年に設立され、代表取締役の伊藤晃寿氏を中心に、先端的なエネルギー技術の研究・開発を行っています。本社を宮城県仙台市に構える同社は、国立大学法人東北大学と連携し、実用化に向けた研究を進めています。また、最新の研究成果は「ACS Applied Energy Materials」誌に掲載され、業界から注目を浴びる存在となっています。
この触媒技術が更なる発展を遂げ、エネルギーの未来を切り開く一助となることが期待されます。
会社情報
- 会社名
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AZUL Energy株式会社
- 住所
- 宮城県仙台市青葉区一番町1-9-1仙台トラストタワー10階 CROSSCOOP内
- 電話番号
-
022-209-5333