日本の女性起業家を襲うセクハラの実態
研究論文の発表
一般社団法人および株式会社Eirene Universityが運営する「アイリーニ・マネジメント・スクール」による日本の女性起業家に関する研究論文『Sexual Harassment by Multiple Stakeholders in Entrepreneurship: The Case of Japan』が、国際的な学術誌『Journal of Business Venturing Insights』の2025年6月号に掲載されることとなりました。この論文は、女性起業家が投資家や顧客などの複数のステークホルダーから、どのようにセクシャル・ハラスメント(セクハラ)の被害を受けているかを探るものです。
セクハラの深刻な実態
本調査において、回答者105名の女性起業家のうち52.4%が過去1年間にセクハラの被害を受けたと報告しています。これは、女性起業家が事業活動を行う中で、依存度の高い投資家や顧客との力関係に起因するものです。このような状況は、彼女たちがセクハラに直面した際に声を上げにくくする要因となっていることが示されています。
クラウドファンディングの実施
この研究の成果を広く世界に発信し、早急な実務や政策的な対策を促進するため、2025年3月1日までクラウドファンディングが実施されています。目標金額は55万円で、支援金は主に学術誌へのオープンアクセス費用に充てられます。この取り組みは、被害の実態を浮き彫りにし、解決へ向けた具体的な行動を促すことを目的としています。
調査の背景と問題の構造
本研究では、政府がスタートアップの育成を掲げている一方で、女性起業家が直面している権力の不均衡に着目しています。調査の結果によれば、セクハラの被害を受けた起業家は、精神的な苦痛や業務の中断に追い込まれるケースがあり、日本経済全体のイノベーションが失速する危険性があると警告しています。
論文のポイント
調査は定量的かつ定性的に行われ、女性起業家が直面する構造的な問題を明らかにしました。具体的には、次の4つの要因が絡んでいることが指摘されています:
1. 埋め込まれた差別(Embedded Discrimination)
2. 制度的な搾取(Systemic Exploitation)
3. 保護策の欠如(Safeguard Voids)
4. 避けられない負担を伴う選択(Adaptive Burden Choices)
これらの問題により、被害者が声を上げにくくなる悪循環が形成され、実態が表面化しにくいとされています。
社会的影響と今後の展望
今回の研究は、投資家やアクセラレーターが行動規範を策定し、女性起業家を法律上の保護対象とする制度改革の必要性を提言しています。公平なスタートアップ環境の構築は、長期的な経済成長やイノベーション創出へとつながると強調されています。今後は、メディアへの報道や国際ネットワークへの発信も強化し、問題の可視化を続けていく方針です。
終わりに
本研究のファウンダーである柏野 尊徳氏は、研究成果を多くの人々と共有し、具体的な社会対策を促進することの重要性を訴えています。セクハラがゼロのビジネス環境を目指し、持続可能で創造的な起業家エコシステムを構築することが求められています。