安藤ハザマの新しい自動施工技術
安藤ハザマ(本社:東京都港区)が、山岳トンネル工事において革新的な技術を開発しました。これは、ニシオティーアンドエム株式会社と共同で進めた吹付けコンクリートの自動施工技術です。この技術は、ICTを活用し、山岳トンネル工事の生産性や安全性を向上させることを目的としています。
1. 技術開発の背景
近年、日本の建設業界は少子高齢化に直面しており、熟練作業員が減少しています。これにより、トンネル工事の生産性を維持するためには、新たなアプローチが不可欠となっています。特に、吹付けコンクリート作業には熟練した技術が必要とされているため、この技術開発が求められました。
実際、従来の方法では熟練作業員の経験や感覚に頼る部分が多く、効率的な作業が難しい状況です。また、吹付けコンクリート作業で発生する粉じんや労働環境の問題も深刻です。これらの背景を受けて、安藤ハザマは「省人化、省力化による生産性向上」「熟練作業員の技能に依存しない施工方法の確立」「労働環境の改善」という目標を掲げて、この新技術の開発に着手しました。
2. 自動施工技術の特長
新たに開発された吹付けコンクリートの自動施工技術は、主に3つのプログラムからなっています。オペレータは、吹付け機本体に付属するタブレットを使って、簡単に操作を行うだけで、自動的に吹付けコンクリートを施工できます。
- - 切羽出来形取得プログラム:LiDAR技術を用いて切羽の三次元データを取得し、コンクリートの必要数量を算出します。施工後の厚さも確認できます。
- - 位置情報演算処理プログラム:三次元データから施工範囲を設定し、自動でノズルのルートを算出します。これにより、ノズルの位置や角度を精確に制御することが可能です。
- - 油圧制御プログラム:ノズル先端の位置や角度をもとに、油圧制御を行い、各アクチュエータの動きを調整します。
これにより、熟練の技能なくとも高い精度でコンクリート施工が可能となります。
3. 実証試験の結果
技術の実証試験は模擬トンネルを用いて行われ、全ての機能が期待通りに動作することが確認されました。特に「吹付けコンクリートの必要数量の算出」「自動施工の実施」「施工後の厚さ確認」のプロセスが円滑に行われ、技術の実用性が示されました。
4. 今後の展望
安藤ハザマは、本技術を年度内に実際の山岳トンネル現場で導入する計画を立てています。将来的には、完全な無人化施工を目指してさらなる技術開発を続けていく意向です。この技術が実用化されれば、熟練作業員の不足に対処しつつ、より安全で効率的な施工が実現することでしょう。
この取り組みは、安藤ハザマが業界の問題解決に向けた新たな一歩を踏み出したことを示しています。今後、このようなスマートな工事技術が他の分野にも広がることが期待されます。