離島医療の未来を切り開く薩摩川内市のマルチ医療DX事業とは
鹿児島県の薩摩川内市では、高齢化や過疎化に伴う医療ニーズと向き合うために、画期的な医療革新が進められています。それが、医療とデジタル技術を融合させた「マルチ医療DX事業」です。この取り組みの一環として、甑島での医療MaaS(Mobility as a Service)の運用が開始され、地域住民の医療アクセス向上を目指しています。
背景
鹿児島県薩摩川内市には有人離島の甑島があります。この島には約3,500人が住んでおり、高齢化が進んでいます。特に高齢者の独居や認知症を抱える世帯が増える中、医療のニーズはますます高まっています。そして、2025年には南海トラフ巨大地震の発生確率が大幅に引き上げられる見通しで、災害時の医療対策も急務です。
市はこれらの課題を克服するため、デジタル田園都市国家構想を活用し、医療体制の強化に努めています。その中核とも言えるのが「マルチ医療DX事業」であり、これは鹿児島地域医療介護ネットワークとパシフィックメディカルが連携して推進しています。
医療情報連携ネットワーク「かごネット」の導入
「マルチ医療DX事業」の中で最も注目を集めるのが、「かごネット」という地域医療情報連携ネットワークです。これは、鹿児島県内で初めて導入されたもので、地域の病院や診療所、調剤薬局など140の医療機関が参加しています。患者の診療歴や処方内容などの情報が一元管理され、医療機関間で共有可能になったことで、医療の質が飛躍的に向上しました。
これにより、患者がどの医療機関に行っても、過去の医療情報が容易に看護師や医師に確認されることで、必要な医療を迅速に受けられる体制が整いました。また、重複した検査や処方を避けることができ、より効率的な医療提供が可能となりました。
甑島の医療MaaS:「医療のモビリティ」への取り組み
今回の新たな取り組みの中で、特に甑島での医療MaaSの導入が鍵となります。島内には診療所がありますが、医師が巡回診療を行うため、医療へのアクセスが限られていました。しかし、医療MaaSの導入により、必要な医療を必要な場所で提供できる体制が整いつつあります。
具体的には、医療MaaS車両が導入され、バイタル機器を搭載したこの車両が、島内を巡回して診療を行います。これにより、通院が難しい患者に対しても自宅近くで医療サービスを受けられる環境が整います。また、オンライン診療が活用されることで、医師と連携した適切な診療が実現されます。
計画の未来と薩摩川内市市長のコメント
薩摩川内市長の田中良二氏は、かごネットが「1地域・1患者・1カルテ」を実現することで、質の高い医療が提供される環境が整ったと強調しています。医療MaaSを通じて、どのように地域のニーズに応えていくことができるかは今後の課題です。
田中市長は、医療と介護の情報ネットワークが複合的に絡むことで、市民が安心して暮らせる環境を整えることに寄与すると確信しています。今後もこの取り組みを通じて、離島医療がどのように進化していくのか、注目が集まります。
結論
鹿児島県薩摩川内市の「マルチ医療DX事業」は、離島医療に革命をもたらす試みです。この取り組みが成功すれば、地域住民の医療アクセスが大きく向上し、安心して暮らせる未来が築かれることでしょう。地域医療の持続的な発展を支えるために、これからもさらなる革新が求められます。