次世代治療法への挑戦:iPS細胞由来の心筋球治療
2024年に入って、順天堂医院では重症心不全に苦しむ患者向けの「ヒトiPS細胞由来心筋球治療」の治験が実施されることとなりました。この治療法は、Heartseed株式会社が提供するiPS細胞を利用して新たな可能性を探るものです。この新しい試みは、国内で5番目の治験施設として順天堂医院が名を連ねることになります。
対象疾患とその選定基準
本治験が対象とするのは、心筋梗塞を含む虚血性心疾患の患者で、心機能が著しく低下している場合です。具体的には、左心室の駆出率(LVEF)が15%から40%の範囲にある患者が対象となります。また、弁膜症の手術など他の手術と同時に治療を行うことはできません。これにより、治療の効果をより明確に検証することが期待されています。
治療プロセスの概要
治療方法としては、まずは冠動脈バイパス手術を行い、その手術に続いて、iPS細胞由来の心筋球を心臓の動きが悪くなっている部位へ直接投与します。この際、特殊な針を使って投与が行われるため、心臓へ過度に侵入することなく、安全に施術が行えます。使用されるiPS細胞は、元気なドナーから取得されたもので、高純度の心筋細胞として培養される進化を遂げています。
免疫抑制と副作用のリスク
この治療法では、他人のiPS細胞を使用するため、拒絶反応を防ぐための免疫抑制剤とステロイドが必要です。これらの薬は副作用のリスクを伴い、特に腎機能障害や糖尿病を持つ患者さんは治療が受けられない可能性があります。治療に関心のある方は、詳細を順天堂医院の担当医に問い合わせることをお勧めします。
期待される効果と安全性の検証
治験は現在進行形であり、心筋細胞を心臓に直接注入することで心臓の機能を助ける効果が期待されていますが、有効性に関してはまだ確立されていません。また、iPS細胞による腫瘍や不整脈のリスク、さらに免疫抑制剤の副作用についても、慎重に検討されています。これらのリスクに関しては、特に動物実験でリスクが確認されていないとされていますが、ヒトの臨床試験を通じて安全性が再評価される必要があります。
医療機関での相談
この治験は、順天堂医院に限らず複数の医療施設が参加していますが、治療を受けられる患者は治験の基準を満たした方に限られます。受けたいと考えている方は、医療者に相談し、順天堂医院のハートセンター外来または心臓血管外科までご連絡ください。患者にとって新たな希望となる治療法が、実際に効果をもたらす日が待ち望まれます。