海外赴任者の給与・手当実態調査の更新
EY税理士法人は最新の調査結果を発表しました。この調査では、国内200社以上の企業によって海外赴任者の給与及び手当の実態を明らかにし、業界の動向を読み解くことを目的としています。特に「第8回EYモビリティサーベイ」というタイトルの下、2025年の1月から3月にかけて三ヶ月間にわたる調査が行われました。
調査の主なポイント
調査の結果、海外赴任者に対する給与体系の主流は、74%が「購買力補償方式」を採用していることがわかりました。この方式は、本国での購買力と同等の水準を維持することを目的とし、赴任先でも同様の生活水準が保たれるよう設計されています。このようなアプローチにより、共通の給与基準に基づいた透明性のある給与体系が確立されています。
しかしながら、役職ごとの海外勤務手当および単身赴任手当の金額は、過去3年間で約10%前後の上昇が見られました。特に課長クラスと一般スタッフクラスでの上昇が顕著です。これが日本企業全体の賃上げ機運に与える影響を感じさせる結果となっています。
現地物価高騰と企業の対応
一方で、多くの企業は海外赴任者に対して「現地物価の高騰」に適応するための手当の調整が必要であるという課題を抱えています。
一部の企業は、税務リスクを低減するために外部専門家を活用するなど、対応に苦慮している様子が伺えます。調査からは、規程の見直しにおいて「世間相場の把握」が難しい要素として挙げられ、多くの企業がその対応に消極的であることがわかりました。
海外赴任者規程の改訂状況
実際に、245社中68%が「赴任者の処遇改善」のために規程の見直しを行ったと答えていますが、その中でも特に「世間相場の把握」は人事担当者にとって難しい課題として残っています。この現状を考えると、企業がフレキシブルかつ迅速に対応するためには外部の専門知識を必要とすると感じられるでしょう。
最近では、海外赴任者規程の見直しが進んでいない企業が多い一方で、ハードシップ手当や単身赴任手当の基準は明確化されつつあることも診て取れます。特に、ハードシップ手当の支給については企業独自の基準や調査結果を基にした定義が主流となっており、62%ほどの企業がこれを採用しています。
労災特別加入制度
調査では、労災保険の海外派遣者特別加入制度についても言及されており、59%が全員が加入していると回答する一方で18%が特別加入していないと答えました。特に加加入や不要には注意が必要であり、企業がこのプロセスを整える必要があります。
最後に、EYでは引き続きこのサーベイを実施し、各企業にとって価値ある情報の提供を行うと共に、海外赴任者に対する配慮を充実させていくことを目指します。