大阪・関西万博での膜技術の進化と将来への期待

大阪・関西万博で進化する膜技術のすべて

2024年に開催予定の「大阪・関西万博」では、参加者を驚かせる独創的なデザインのパビリオンが多く登場する。その背後には、優れた膜技術を持つ『太陽工業』の存在がある。特に万博のシンボルともいえる大屋根リングや、数々のパビリオンが、この会社の『膜』によって支えられている。

「太陽工業」とは？

1912年に創業された『太陽工業』は、当初はテント商会から始まった企業だ。創業者の憧れから、革新的なモダンテントを製造し、これが現代の空気膜構造の礎となった。しかし、戦争の影響で一時期事業が停滞した後、戦後に復活。特に1970年の大阪万博では、膜を使ったテント構造物の9割を手掛け、一躍その名を知られるようになった。

現代の挑戦と未来の展望

『太陽工業』の現在の社長である能村祐己氏は、4人兄弟の末っ子として生まれ、幼少期から非常に厳しい教育を受けて育った。小学6年生でイギリスに単身留学するなど、若いうちから国際的な視野を持つ人材へと成長した。帰国後の大学生活では、起業家研究会に所属し、インターネットサービスの運営に挑戦。ところが、収益化がうまくいかず、無情にも事業は終了。そんな中、上場企業に入社し、厳しい社会経験を積むこととなった。

2010年、能村氏は上海万博に参加した。納期まで2ヶ月しかない中、工事現場では試行錯誤の連続で、次々に膜が破れるトラブルが発生。その結果、現場では100人規模の大乱闘が巻き起こるという、驚くべきエピソードも今では笑い話だ。

「未来型サウナ」の登場

「大阪・関西万博」の新しい試みとして、エンターテイメントと健康を両立させた『未来型のサウナ』が注目を集めている。内部は白を基調とし、特殊な膜を利用したサウナ室では、自然光が差し込み、贅沢なリラックス空間が広がる。サウナの中では七種類の香りや音、光の演出が施され、まるでリゾート地にいるかのような感覚を与えてくれる。この新たな体験は、多くの人々を魅了する予感がする。

万博を支える技術の数々

『太陽工業』は、万博での成功を支える技術革新を重ねてきた。近年、同社が手がける新素材『ミラー膜』は、金属と樹脂を組み合わせたもので、振動などに応じて映り方が変化する新しい特性を持つ。この独自の膜が、シグネチャーパビリオン「null2（ヌルヌル）」で採用されることになった。さらに今回の万博では、すでに30以上の施設に関与しており、その売上高は542億円に達するまでに成長した。

被災地を守る膜技術

『太陽工業』の膜技術は、日常生活の中でもさまざまな形で活用されている。最近の未曾有の大災害の中では、決壊した堤防の仮復旧工事などに膜が使用されることも。新型コロナウイルスの感染拡大によって、発熱外来やPCR検査場でもその防護力が求められ、『命を守る』ための膜技術として一役を担っている。さまざまな用途に応じた膜の性能向上を目指し、社内の技術研究所では摩擦耐久試験などが行われ、研究者たちが安全性や品質向上に努めている。