国立大学法人岡山大学の研究チームが、血漿タンパク質であるアンチトロンビンの新たな受容体を発見しました。具体的には、CLEC1AというC型レクチンファミリーの受容体で、これによりアンチトロンビンがヒトの好中球の活動を調節することが分かりました。
この研究では、アンチトロンビンが好中球の形態を滑らかな正球形に変化させることが確認され、さらに、細胞死を抑制すると共に、活性酸素分子種(ROS)の生成を抑える役割を果たすことが示されました。これにより、アンチトロンビンが従来知られていた抗凝固作用だけでなく、炎症反応においても重要な役割を持つことが明らかになったのです。
特にCLEC1A受容体の刺激が、アンチトロンビンの抗炎症作用にどのように関与しているかという点が特筆すべき点です。この発見は、アンチトロンビン製剤が持つ抗炎症作用のメカニズムをより深く理解する手助けとなるでしょう。この研究成果は2024年10月8日に、国際専門誌『Blood, Vessels, Thrombosis & Hemostasis』に掲載されています。
この研究グループを率いる西堀正洋教授は、定年退職後も特任・特命教授として若手研究者たちと活発に研究に取り組んでおり、今回の成果もその一環です。また、阪口政清教授の研究チームが開発した革新性のあるスクリーニング法を使用することで、新しい受容体の同定が実現しました。これにより、血漿タンパク質分野における新たな展開が期待されています。
アンチトロンビンはこれまでも抗凝固作用でよく知られていましたが、炎症におけるその役割が認識されることで、今後の医療分野への応用が進むと考えられます。具体的には、抗炎症作用を持つ新しい治療法、特に自己免疫疾患や炎症性疾患における治療アプローチとしての可能性が挙げられます。
本研究に対する支援は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構および日本血液製剤機構からも受けており、今後さらなる研究と臨床応用が進むことが期待されています。アンチトロンビンおよびその受容体に関する研究が進展し、さらなる健康改善に寄与することを期待しましょう。