株式会社JCCLが有人宇宙探査船内でのCO2分離装置を設計
福岡市西区に本社を置く株式会社JCCLは、九州大学、JAXA、東京工業大学と協力して、月面探査プログラム「アルテミス計画」に関する新たな技術を開発しました。これにより、有圧ローバー内で宇宙飛行士の居住空間から二酸化炭素(CO2)を分離し、船外へ排出するための膜分離装置の設計に成功しました。
宇宙飛行士の健康を守る重要な装置
今回の設計は、NASAが提案しているアルテミス計画に基づいており、宇宙飛行士が約1か月間、月面に滞在しながら探査することを想定したものです。宇宙飛行士が呼気として排出するCO2を効率的に分離し、船内のCO2濃度を安全なレベルに保つことは、宇宙での生活において極めて重要です。
この膜分離装置は、九州大学の星野教授が開発した高性能なCO2選択透過膜を利用しています。アミンを含むゲル粒子膜により、CO2の選択的な透過が可能になり、別途設計された減圧蒸気スイープ型膜分離装置を通じて、宇宙飛行士の活動に応じた最適な条件で運用されます。
効率的なCO2除去のための工夫
研究チームは、宇宙飛行士の活動(就寝、運動など)に伴うCO2の発生量の変化に対応するため、適切に膜モジュールの数を調整する方法を見出しました。これにより、宇宙船内で必要な酸素や窒素を失うことなく、効率的にCO2濃度を低く保つことができるという結果が得られました。
さらに、運動の負荷に応じて吸入する空気の量を調整することで、装置のエネルギー消費を大幅に削減できる見込みも立てられています。これは、宇宙探査への応用だけでなく、地球上でのCO2の直接回収技術(DAC)としても期待されています。
宇宙探査技術の未来
この成果は、JAXA宇宙探査イノベーションハブ事業の一環として、2024年9月11日に化学工学会第55回秋季大会で紹介される予定です。今後は、より小型化を目指した研究が進められ、有人宇宙船への導入が期待されています。
この革新的な研究は、持続的な宇宙探査を可能にするだけでなく、地球環境のCO2管理にも寄与する技術として、ますます注目を集めることでしょう。知識と技術が結集した今回のプロジェクトが、未来の宇宙探査における重要な一歩となることを期待しています。