複数の言語と人生の交錯を描く新たなオーラル・ヒストリー
2025年9月25日、株式会社くろしお出版から新刊『複数の言語で生きて死ぬ人生物語編』がリリースされます。この作品は、言語と人間の人生を深く掘り下げるためのインタビュー集として、複数の言語を操る人々の生の声を集約した貴重な一冊です。著者の山本冴里氏が手がけた本書は、読者に対し多様な言語の重なりを感じさせ、人生の物語を紡いでいきます。
テーマと背景
『複数の言語で生きて死ぬ』は、2022年に刊行された前作で、その後の文学や教育に多大な影響を与え、引用され続けています。山本氏は言語をテーマにした著作を多数発表しており、本書ではそのテーマをさらに掘り下げていくことを目指しています。読者はこの本を通じて、日本語を基盤とする一方で、様々な言語を生活の中で使ってきた人々の体験を直に感じることができます。
本書のまえがきには、「国民」に拘束されない生の実態を描く意義が語られています。先般の参院選でのヘイトスピーチが多発した背景も踏まえ、そこでの抵抗の重要性を強く訴える内容は、読者に他者の視点からの理解を促します。
推薦の声
ロシア文学者の亀山郁夫氏は、本作を「稀有のオーラル・ヒストリー」と称賛し、歴史的かつグローバルな視点への移行を高く評価しています。彼は、言語の自由の重要性を語り、言語が持つ力を再確認させてくれます。彼の推薦により、本書への期待がさらに高まることでしょう。
目次の紹介
本書では、各章が異なる人物の物語を描いています。
1.
罪があるとしたら朝鮮の男を愛したことだけです―二〇歳で海峡を渡った母さん
2.
We have allegiance of both countries よね―アメリカのために戦った日系二世
3.
今の暮らしが、なんというか心配がないね―満州からブラジルへ
4.
鳥はいいね、どこでも行けるし―サハリン残留日本人の家族の言葉
5.
私たちは、外国人かもしれないが、ウチナーンチュである―ペルーからやってきた沖縄人
6.
全部少しずつで、積み重ねでここまで来たんだ―中国の農村から都会へ
7.
言語は自由だ―ルーツはアイルランド、いろいろな言葉とめぐりあう
8.
イベタンイベチカリ、あれは母親の願いがこもってたんだろうなあ―アイヌに生まれて、見失ったもの、見直せたもの
書誌情報と編者の経歴
『複数の言語で生きて死ぬ人生物語編』は、定価2,420円(本体2,200円+税)、ISBN978-4-8011-1017-5、判型は四六判で、252ページから構成されています。この作品は、山本冴里氏が編者として様々な言葉を組み合わせ、多様性を際立たせることを試みています。
山本氏は、日本語教育研究科で博士号を取得後、教育機関にて日本語と複言語教育に従事しており、著書には様々な言語に関する研究が含まれています。彼女の専門性は、本書をより深い内容に仕立て上げています。
まとめ
『複数の言語で生きて死ぬ人生物語編』は、多文化共生や言語の自由、個々人の物語に対する深い洞察を提供する貴重な書籍です。さまざまな声が響き合うこの作品は、多様性を尊重する社会を築くための力強い一歩となることでしょう。この新たなオーラル・ヒストリーを手に取ることを、多くの人にお勧めします。