情報通信業界におけるM&Aの現状
株式会社M&A総合研究所が発表した『上場企業M&A動向調査レポート(情報通信業界版)』によると、2018年から2024年の間に成立した情報通信業界のM&A件数は合計765件に達しました。この調査は、東証における適時開示情報を基にしたもので、業種ごとの詳細な内訳も示されています。
M&A成約件数の推移
調査データによると、情報通信業界の750件のM&Aのうち、同業種間での成約件数は399件(約52.2%)、異業種間は366件(約47.8%)となっています。特に、IT・ソフトウエア業界が714件で93.3%を占めており、他の業種を大きく引き離しています。2024年の初めの3ヶ月間だけでも42件のM&Aが成約されており、その大部分はIT・ソフトウエアによるものです。
最も多くのM&Aが成立した年は2023年で、142件が報告されました。なぜこのような増加が見られたのでしょうか?その背景には、コロナ禍によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進と、テレワークの導入が挙げられています。多くの企業が業務の効率化を求める中で、ITに対する需要が高まったことが要因とされています。
人材不足が影響するM&Aの未来
一方で、IT業界は深刻な人材不足に直面しています。経済産業省は、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると予測しています。この問題を解決するため、企業はM&Aを通じて技術者の確保や新技術の獲得を目指すと考えられます。特に、DX推進に必要な技術力を強化するべく、イノベーションを図る企業が増えるでしょう。
具体的な取引事例
最近のM&A事例として、カナデンによる日本制御エンジニアリングの子会社化や、LITALICOによるプラスワンソリューションズの完全子会社化などがあります。
1. カナデンの子会社化
カナデンは、電力系統制御技術を有する日本制御エンジニアリングの持株会社を子会社化することを発表しました。これにより、国内外のIoTニーズに対応した体制を整え、グループ全体の技術者数を増やす狙いがあります。取得価額は14億500万円で、株式譲渡は2023年12月27日を予定しています。
2. LITALICOの子会社化
LITALICOは沖縄県のプラスワンソリューションズを完全子会社化しました。同社はデジタル化した介護事業に関連するソフトウェアを提供しており、LITALICOは障害福祉と介護の両分野での成長を狙っています。本件の取得価額は11億9,000万円で、株式譲渡実行日は2022年3月31日です。
結論
情報通信業界のM&A市場は、今後も活発な動きをみせると考えられます。特に、IT人材不足が影響を及ぼす中で、企業はさらなる成長のためにM&Aを積極的に活用する必要があるでしょう。その結果、業界全体の競争力が高まり、技術革新が促進されることが期待されています。