企業の借入金利、半数超が上昇!平均金利は3年ぶりに1%台へ
日本銀行がマイナス金利政策を解除してから3か月が経過した。金融政策の正常化が進み、国内債券市場では長期金利が上昇し、企業の支払利息も増加傾向にある。帝国データバンクが約8万社の借入金利を調査した結果、2023年度に借入金利が上昇した企業は54.9%に達し、前年度から上昇幅が拡大した。平均借入金利は3年ぶりに1%を超え、多くの企業が金利上昇を実感している。
金利上昇の割合、最も高いのは「卸売業」、製造業は低位にとどまる
業種別に見ると、全業種で借入金利が上昇した企業の割合が5割を超えた。中でも、「卸売業」が56.4%と最も高く、貴金属製品卸売業や家具・建具・什器卸売業が特に高い数値を示した。一方、借入金利の上昇が最も低かったのは「不動産業」で53.3%だった。土地仕入れなどで借入負担が大きい事業特性や、金利上昇に対するネガティブな反応が大きいことも要因と考えられる。設備投資などで借入金額が比較的大きい製造業も、53.8%と低い水準となった。
金融機関別:取引金融機関で大きな差異はみられず
取引するメインバンク別に分析すると、2023年度に借入金利が上昇した企業の割合は、メガバンクをメインバンクとする企業が56.8%と最も高かった。一方で、地方銀行では53.5%と最も低かった。各金融機関の業態による金利動向の違いはみられるものの、いずれの金融機関でも2023年度に借入金利が上昇した企業が半数を占めている。
中小企業の評価は二分 - 経営体力試される局面に
金利上昇に対する中小企業の評価は、業種や企業規模、財務内容によって二分されている。一部の企業では、新規の借り入れや設備投資への影響を懸念する声がある一方で、預金金利の上昇による好影響や、企業活動の正常化などを評価する声もある。
しかし、今後の金利上昇に伴い、超低金利の環境下で圧縮できた借入金の利払い費用が膨らむことが見込まれ、企業の収益力低下につながる可能性もある。帝国データバンクの試算では、企業の借入金利が0.5%上昇した場合、利息負担が1社あたり136万円増加し、全体の3.8%が経常赤字に転落する可能性が指摘されている。
2024年度以降も、借入金利は市場金利に連動して緩やかな上昇傾向が見込まれる。企業は利上げ局面に対応できる経営体力を持つことが重要となる。
金利上昇は企業経営の新たな課題 - 柔軟な対応と経営体力の強化が必須
今回の調査結果から、日本銀行のマイナス金利政策解除後、企業の借入金利は上昇傾向にあることが明らかになった。特に、卸売業やサービス業など、事業の拡大や成長を目的とした借入金が多い業種では、金利上昇の影響が顕著に現れている。
金利上昇は企業経営にとって新たな課題となる。利払い費用の増加は収益力低下につながり、将来の成長戦略や投資計画にも影響を与える可能性がある。企業は、金利上昇に対応するために、以下の点を意識することが重要となる。
借入金の構造を見直し、低金利での借り換えを検討する。
事業計画の見直しを行い、収益力向上やコスト削減に取り組む。
資金繰り管理を徹底し、短期的な資金不足に備える。
経営体力を強化し、金利上昇に対する耐性を高める。
特に、中小企業にとっては、経営体力強化が重要となる。金利上昇に備えて、資金繰り管理や収益力向上に注力し、将来の事業継続性を確保することが求められる。
今回の調査結果は、金融政策の変化が企業経営に大きな影響を与える可能性を示唆している。企業は、時代の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するために、積極的に経営戦略を見直す必要がある。