企業加齢とイノベーションの関係
2025-05-20 11:10:25
企業の加齢がイノベーションに与える影響とは?新たな研究で明らかに
近年、企業の高齢化が進む中、その影響がイノベーションにどのように現れるのかについて注目されています。早稲田大学の清水洋教授らの研究グループは、企業が加齢することによって硬直化し、研究開発ポートフォリオに影響を及ぼすことを示しました。
企業が加齢すると、通常は収益性やイノベーションの減少が観察され、その原因は経営資源の柔軟な組み換えが難しくなるからだと言われています。しかし、これまでの研究ではその硬直化の程度を具体的に測定する手段がなかったのが実情でした。
この研究では、企業の過去の研究開発ポートフォリオを基に、硬直性をコサイン類似度という手法を用いて測定しました。コサイン類似度は、主に異なる企業間の技術的な類似性を測定する際に使用されてきましたが、この研究では同一企業の過去との類似性を評価することに応用されました。
結果として、企業の研究開発ポートフォリオが硬直化することが観察され、特許の発明量は増加するものの、その質は低下するという興味深い結果が得られました。この傾向はアメリカの企業に限らず、日本企業にも当てはまり、企業の高齢化が進むにつれて経営資源の柔軟性を高めることが必要であることが示されています。
清水教授は、「加齢した企業は、柔軟な経営資源の組み換えが戦略的に重要である」と指摘しています。本研究は、アメリカ企業を対象に行われましたが、日本企業の硬直化の程度は特に高いことがわかりました。
日本の企業は、他の国々に比べても新陳代謝が少なく、加齢による硬直化の問題がより顕著です。このような背景を考えると、企業の加齢問題に対処するためには、柔軟性のある経営戦略や新たな企業の創出、そして古い企業の退出を促進する必要があるとされています。
さらに、硬直化が必ずしも悪い結果をもたらすわけではありません。同じ技術分野に長く携わることで得られる専門性や成果があるほか、汎用性の高い技術においては、その領域における研究開発の一貫性が大きな利点となる場合もあります。
今後の研究では、企業が加齢を経ても硬直化を防ぐためにはどのような要素が重要か、さらなる分析が期待されています。特に、イノベーションを生み出すために、企業がどのようにいったん確立した枠組みから脱却できるかが課題となるでしょう。
今回の研究成果は、2025年4月26日にSPRINGER NATUREから発行される『Journal of Evolutionary Economics』誌に掲載されます。今後もこのテーマに関する研究が進むことで、企業の加齢による硬直化への対策が明らかになっていくことが期待されています。
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