マイクロバイオーム解析の革新
2025-03-18 14:05:22

次世代シーケンサーによるマイクロバイオーム解析の革新と未来への展望

次世代シーケンサーによるマイクロバイオーム解析の革新



国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の最近の研究により、マイクロバイオームの解析が新たな段階へと進化しました。特にバイオメディカル研究部門のDieter Tourlousse主任研究員とYuji Sekiguchi総括研究主幹が取り組むこのプロジェクトでは、細菌と真菌といった多様な微生物を同時に測定できる人工核酸標準物質が開発され、次世代シーケンサーによる解析の信頼性が飛躍的に向上しました。

マイクロバイオームとその重要性



マイクロバイオームは、腸内や自然環境に存在する微生物群の集合体を指します。最近の研究によって、マイクロバイオームの多様性が我々の健康や病気の発症にどのように影響するかが明らかになっています。特に、腸内の微生物群は糖尿病や神経疾患、アレルギーの発症と関連性が示唆されており、その微生物を理解することが新しい治療法の開発につながると期待されています。

しかし、従来の方法では微生物の絶対量を直接測定することが困難であり、異なる試料間での比較が難しいという課題がありました。この問題を解決するため、産総研は次世代シーケンサーを使用した新しい解析手法を開発しました。

新たな人工核酸標準物質の開発



研究チームは、既存の技術を基にした新しい人工核酸標準物質を開発しました。この標準物質は、細菌という原核生物だけでなく、真菌といった真核微生物も同時に捕捉することが可能です。これにより、マイクロバイオームの分析において、細菌と真菌の絶対定量が同時に行えるようになりました。

今回開発された標準物質は、主にrRNA遺伝子に基づいており、rRNAは細菌や真菌といったあらゆる生物が持つ重要なマーカーです。本研究では、これまでの方法では異なるプライマーを用いて微生物種を分析していましたが、新たな標準物質を使用することで、両者の相対定量を行い、比率を推定することが可能になりました。

研究成果と今後の展望



この新しいアプローチによって、マイクロバイオームの研究は飛躍的に進展することが期待されています。特に、クローン病などの炎症性疾患の関連性が示される中で、真菌の役割を明らかにすることが健康の維持や病気の予防に役立つでしょう。本研究で得られたデータは、新しい診断薬や治療法の開発へとつながる可能性があります。

さらに産総研は、今後も新たなマイクロバイオーム解析技術の開発を進めるとともに、他の環境における微生物群の絶対定量にも取り組む予定です。例えば、皮膚に存在する微生物のデータベースを構築し、さまざまな疾患と関連付けて研究を進めることが見込まれています。これにより、マイクロバイオームの解析の精度がさらに向上し、質保証や標準化が進むことになるでしょう。

研究論文の発表



この研究成果は2025年3月17日に「ISME Communications」に掲載され、詳細な内容が記述されています。今後の研究は、微生物の絶対定量を可能にする技術の進展により、科学界において新しい理解が生まれることを示唆しています。

最新の研究成果に注目が集まる中で、今後のマイクロバイオーム研究に期待が寄せられています。


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